一歩先行くヒラメ釣り


2014年02月日本記録に認定されたヒラメ
8.50kg(4Lbラインクラス)

 基本的にヒラメ釣りに名人は居ないと言われるほど運が釣果を大きく左右する釣りです。船をポイントに着けたときに、その日の釣り座(席)に如何に船長がヒラメを当てくれるか?が勝負といっても過言ではありません。でも、運だけの釣りではヒラメ釣りが面白くありません。そんな中でも色々と考え、納得の一匹を釣りたいものです。運の影響が大きいとはいえ、その運を生かすも殺すもその人の腕次第であることはどの釣りでも一緒です。そこで今回は以前の“あの奥義”に続き、その最新版というか、その後の僕が得た知見を元に、その修正や追補版としてこれを書きたいと思います。勿論“あの奥義”を踏まえた上のことであり、あれを理解していない人にはこれを読んでもらっても何も得ることはないと思いますので、まずはそちらの熟読をお願いします。そして、内容的にダブっている部分もあると思いますが、その場合はこちらを優先してください。『奥義』を書いた頃より知見が増えて変わった部分ですので。加えてこれら総てが個人的なことですのでその辺のご了承は頂きたいと思います。

 まず、一番先に述べたいのはこの釣りには“俺が・俺が”の人が多い釣りです。釣っていて気分が悪くなることも多々あります。一番その辺を感じるのは釣っている時に隣の人の糸をまったく見ていない人が多過ぎることです。たかが数メートル間隔で、深いところだと70m、80mなんてところも釣るのですから隣の釣り師の糸がどの方向に行っているのか?を確認しないで仕掛けを投入すればオマツリして当たり前です。要はそういう人は他の釣り師に迷惑をかける訳です。それでもそういう人は同じ事を何度も平気でやって来ます。何を考えて釣っているのでしょう?自分の釣りに没頭するのは素晴らしいことですが、それによって他人に迷惑をかけることはサイテーの行為です。乗り合いの釣りはお互いがお互いに気遣う釣りが出来なければいけません。誰でもが釣りたい気持ちは一緒なのです。それを無視して自分だけの釣りに入ってしまう人は乗り合いではなく、仕立てで釣っていただきたいと思います。
 また、この釣りは運が相当左右します。とはいうものの、釣り座が釣果にかなりの影響をします。ではどこの釣り座を選べばいいのか?と言えば、船頭さんの操船方法やその日の風向、潮(海水)の流れによって左右されるので一概には言えないのですが、一般的には四隅(左右のミヨシ、左右のトモ)がどちらに船を動かしても最初に仕掛けが入るので上等席とされています。特に右ミヨシと右トモはどの船においても特等席です。右ミヨシは型、右トモは数が釣れる船が多いです。ですからほとんどどの船において右のミヨシやトモを取るためには前日から行って確保するしかありません。しかしながら、この釣り座を確保する人って船によって決まっています。勿論、そのために一番乗りで来ているのですからその努力は大変なものだと思いますが、そういう人は他の同乗した人からどんな風に思われているのか解っていないようです。えげつない人だと思われているのですよ!利己主義な人間だと思われているのですよ!それさえも解らない人に僕は悲しみを感じてしまいます。そういう人が大きいのを釣っても、凄いとも偉いとも思えません。乗り合いで釣る船釣りはみんなで楽しむものです。自分さえ良ければいいと考える人は仕立てでもしていただきたいものです。もっとも、他のなんともない席でそういう人たちより釣る快感もあります。逆に最高の釣り座を確保したにもかかわらず普通の釣り座の人に負けるのはとても格好悪いです。
 乗合船には仕立て船にはない
“他の人への心配り”が必要です。是非以上の2点は気を付けてもらいたいものです。

さてそれでは本題にかかります。

【竿】
 ここのところ一番使っているのが2.83mの竿です。『CS lighnting DX 283/Bloodred』という竿で大昔にヤ○オクで購入しました。先日まで『lightning』だと思っていましたが、よく見ると『lighnting』そんな単語は知りません。でも、この竿だけが『lighnting』で、他の竿はみんな『lightning』になっていますからもしかしたらミスプリかもしれません。だとしたら超レア物の竿です。


ミスプリかも。ある意味嬉しいです。

メーカー等は不詳ですがなかなかいい竿です。僕はこの竿を使うことが多いのですが、2.7m前後の竿は使いやすいので他の人もこのくらいの竿を使っていることが多いです。竿も隣と同じ長さだとオマツリしやすいのは当然ですから、いつもそれより短いか長い竿も持って行き、隣の人の竿を見てから変えます。短い方の竿は1.8m、長い方は3.9mまでの竿を数本持って行って、出船前に両隣の人が使う竿を見て自分が使う竿の長さを決めます。また、波の程度によって竿を使い分けたりもしていますが、まだ結論が出ていないので次回にこのようなものを書くチャンスがあったらその時には知見があるでしょう。ですから次回には書けると思っています。
 で、皆様から『いいヒラメ竿ってどんな竿ですか?』ってょく聞かれるので、ここでちょっと書きます。その質問をした人に何をもって“いいヒラメ竿”と言うのか?は分かりませんので、いつもその辺の事を本人に聞き正すのですが、その応えはありません。勿論、そういう人はほとんどの場合これから(ヒラメ釣りを)始める人か?もしくは初めて間もない人、また、希ではありますが、相当やっていても何も考えずに釣っている人のどれかです。
 僕が考えているいい竿とは大物しか掛からない竿です(笑。僕は小物は釣りたくはありません。数を沢山釣って喜んでいるヒラメ釣り師は刺し網か何かをやった方がいいと思います。基本的に僕の釣りは捕獲を目的にしているものはなく、“釣ること”だけに楽しみを持つものです。ですから基本的には総てリリースです。タグ&リリースがほとんどですが、記録魚だったり家族から食べたいと言われた時にはキープします。こんな釣りをしているので小物を釣っても意味がないし、それどころか小さいのが掛かってしまった時には“餌と労力の無駄”としか思えないのです。ですから釣れるのは大物だけでいいのです。ところが一般的な船頭さんは、とにかく数を釣らせたがる人が多いです。瀬藤さんにしてみれば、今日の釣果は明日のコマセですから。大物と数の両立はどんな釣りでも可能性は低いです。ですから僕はそんな中でも大物だけを狙って釣っているのですが、なかなか大物には出くわしません。釣り方がいけないのか?よほど運を持っていないのか?もっとも四隅は譲ってしまうことがほとんどの僕の釣りですから、そういうことも原因になっているのかもしれません。で、大物だけを狙っていると船中のみんなが釣れているのに自分だけがボーズのことは良くある事です。すると船頭さんは僕に釣らせようと努力してくれます。要は今日の釣果に『船中ボーズ無し』としたいのです。こんな時はやはり大物狙いはすべきではなく、小物狙いに変更してとにかく一匹を釣ることに専念することがいいことだと思っています。
 ヒラメ釣りは大きく分けて数ばかり釣りたい人と僕のように型狙いばかりしている人がいます。もっとも大きいのを沢山っていう超欲張りな釣りを本気で考えている素人さんもいます。ではそんな人たちがどんな竿を“いい竿”と言うのか?それは一緒くたには言えないと思っています。で、僕自身が数釣りの人ではないので型狙いの場合の“いい竿”というか“いいと思われる竿”について書いてみようと思います。
 ヒラメ釣りは昔から「ヒラメ40コチ20」と言われるように、魚信があってからアワセの動作(実際にはヒラメ釣りにアワセはありません)に移るまで少々の間を持つのが普通です。これはヒラメは餌を食うのがとてもヘタクソな魚だからです。幼魚の頃は昔普通の魚のように泳いでいた魚がだんだんと横になってあんな形になってしまうのですから顎骨にも無理があるのでしょう。ではそれが本当に40なのか?というとそうではありません。あるものは一発で喰って来ますが、またあるものは2分も待っても食わず、その後追い喰いを7回させて釣ったこともあるくらいなかなか喰ってこない奴もいたりします。これは喰って来たヒラメの大きさに対する餌の大きさと活きの良さに起因するものと思われます。ですから普通サイズのイワシでしたら3kg以上のヒラメなら一呑みにしているはずですので、待ったり送ったりする必要はなく即アワセでいいはずです。それと後ほど詳しく書きますが、ヒラメはアワセちゃ駄目です。よほど刺さりが悪い鈎を使っていない限り、何もしなくても独りでに掛かっているものです。よって、竿先を持ち上げるだけでアワセという鈎を口に刺す行為は必要ないのです。掛かっているのにアワセなんかするとハリス切れを起こし易くなりますし、すっぽ抜けも頻発します。そして何よりも相手が大物だった場合は猛然と暴れられて捕れる魚まで逃がしてしまう可能性が高くなります。少し話が逸れましたので元に戻します。要は大きなヒラメなら待ったり送ったりする必要はないのでそれほど柔らかい竿の必要はありません。それより、無意味に柔らかい竿は大型が掛かった時に竿の胴がブレてなかなかこちらに主導権が得られず、他の人にオマツリしてしまったりして。。。では硬い竿ならいいのか?というと、これまた一概には言えないのです。上記したように、僕の場合基本は置き竿です。ヒラメ釣りの場合手持派の人もいるとは思いますが、そういう人も一日中手持をしている人は希で、時々は置き竿にしていると思われます。手持の方が魚信があったときにすぐに対処できるので断然有利なのは当然です。ですから手持で大物を狙う時であれば硬くて短い竿がいいと思います。ただし、短いと言っても最低で1.8mと思っていてください。これは掛けた魚が船底方面に行った場合、竿先を水中に突っ込んで糸が船底に擦れないように出来る最低の長さだと思うからです。ですから、1.8mというのは一般的な目安であって、船の大きさなどによっても変わることをご了承願います。ところが、手持でない場合は魚信が出てから竿を持つまでのタイムラグがあります。この間にヒラメに逃げられることが多いのは事実です。ではどうしてこういうことが起こるのでしょう?それはやはり何らかの違和感をヒラメが感じてしまうからだと思います。波で船が上げられることにより糸が引っ張られる事や、キーパーから竿を外す時の竿先の動きが糸を通じてヒラメに伝わってしまっていることが考えられます。これを防ぐ為には竿は軟調であるほど良いはずです。また、竿の長さも長い方が良いと思われます。勿論、糸にも弾力性が高いナイロン糸を使ったりすればその効果はもっと上がります。こうなると難しくなって来ます。乗せるまでは柔らかくて、掛けたら硬い竿がいいということですからどちらがいいのか?が分からなくなってしまいます。ただ、先にも書きましたように、大物が相手であれば魚信が来たときにはすでに鈎は口の中にありますから待ったり送ったりするまでもありません。通常であれば置き竿だろうと手持ちだろうとすでに鈎は掛かってしまっています。ということは掛かった後のことだけを考えて硬い方を使っている方が安全です。一つ注意しておきたいことは、ここで言う『軟らかい』とか『硬い』というのは単純に何号のオモリを付けた時にどれだけ曲がるか?ということではありません。使用しているオモリでしなった状態からのしなりの程度と考えて下さい。ちょっと表現が難しいので、僕の場合を例にして具体的に書きたいと思います。僕の場合いよく行く船宿は80号のオモリを使います。けっこう重い方です。当然このオモリを付けて釣るのですから魚が掛かる前から竿先はお辞儀しています。この状態で魚が掛かるのですから、この状態から引いて硬いか軟らかいか?が問題であって、それが僕がいう硬いか軟らかいかということです。メーカーが表示している推奨錘負荷はアバウト過ぎるのであまりアテになりません。例えば推奨錘負荷10号の竿に80号を乗せたとします。すると竿はバットから曲がってしまうので、そこからはあまりしならないと思います。ということはこれは硬い竿ということになります。また、推奨錘負荷200号の竿に80号を乗せたとします。あまりしなりませんが、そこにまた負荷をかけてもやはりあまりしならないでしょう。ということはこれも硬い竿ということになります。これらのことから一概に錘負荷で竿の硬軟は語れないということが解っていただけると思います。ですから、僕が軟らかい竿といっているのは俗に言うところの“腰がない竿”ってことだと思います。しかし、腰がない竿でちょっといいヒラメを掛けた事がある人なら分かると思いますが、竿がブレてしまってとても釣り辛いです。要は主導権が取れないのです。これで解ってもらえると思いますが、大物にも余裕で対処できる竿は小物の食い込みが悪くなりますし、逆に食い込み重視の竿は大物には不向きな竿ということです。つまり両者を両立する竿はあり得ないということです。ではそのどちらをとるか?もしくはその比率をどう取るか?を釣り人自身が考える必要があるということです。僕の場合は気持ち的には硬:軟=8:2くらいにしたいと思っています。加えて言わせてもらうと、硬い竿は竿の操作によって軟らかい竿と同等な扱いもできるのですが、軟らかい竿は硬い竿には出来ないと思っています。もっとも、僕がまだ軟らかい竿の扱いに精通していないだけのことかもしれません。
 僕がヒラメ釣りをはじめてからすでに40年くらいは経ちますので竿も相当数があります。その間、見た目に一番進歩したのはガイドだと思います。個人的に好きなのは富士工業株式会社のLCガイドです。最近の竿は一本足のLDBガイドを使っている物が多いですが、一本足のガイドは掛かる負担が一ヶ所に集中してしまうのでその足が破損することが多いです。それに比べてLCガイドは二本足ですから力が二ヶ所に分散するので、単純に考えれば同じ力が掛かったとしても足に掛かる力は半分です。ただ、二本足のガイドはその部分の竿のしなりを固定してしまう為、そのブランクの本来の調子を壊すと言われています。だったらその分竿を柔らかくすればいいだけです(後述の【ガイド】の項を参照)。
 実は先日、お気に入りの竿を踏まれました。釣りを終えて船が接岸してみんなが竿をはじめ、クーラーボックスや様々な持ち物を防波堤に上げてました。僕も同じようにしていたのですが、荷物が多い人がいたので、その人の荷揚げを手伝ってあげていたその時です。カリガリっともバリバリっとも取れる大きな音がして・・・音がした方を見たら、なんと同船していた人が僕の竿を踏んづけて歩いて行きました。大きな音がしたので、こちら側にいた人たちが一斉に見ましたから本人も気が付いていないはずはないのですが。みんなは竿を踏まれないように場所を変えたりすぐに持ったりして。。。まぁ、歩く場所に竿を置いておいた僕が悪いのです。でも、踏んでも平気でいる人の神経も疑ってしまいます。いずれにしてもブランクにまで届く傷がついたので、今度大物が掛かったらやばそうです。使えないわけではないのですが、不安のまま使っているのも楽しさが半減しますので竿を新たにするしかありません。で、新しい竿を購入しようと思って探してみたらLDBガイドを使っている竿ばかりです。仕方ないので今まで購入した竿を引っ張り出してきて再検証することにしました。普通のガイド、DBガイド、LCガイドの竿が数十本あります。感覚的にどれがいいのか?はあるのですが、今回は数値で見てみることにしました。詳しいことは上記しましたので割愛させていただきますが、僕が良く行く船宿はオモリを80号に統一していますので、水平位で80号を付けた状態、それにもう一つ80号を付けた状態でどのくらいの差があるかで柔らかい竿と硬い竿の判断をしてみることにしました。テストの方法としては下記のようにします。

まずは水平位を確認します。


次に80号のオモリを一つ付けて地面からの距離を測ります。


その次にもう一個80号のオモリを付けて地面からの距離を測ります。


そしてその差を測れば80号を付けてからの竿の柔らかさが判るって寸法です。
 当方、ヒラメに使える竿だけでも100本以上はあるので、総てを計測するのは面倒くさいです。ですので、いままで使ったうち、思い出がある竿を選んで調べてみました。


測りきれないのでこれだけ見てみました

測ってみたのが下の表です。

竿の名前 80号一個負荷 80号二個負荷 備考
CS lighnting DX283/Bloodred 1150 870 280 「lighnting」は「lightning」のミスプリントだと思います。
CS lightning DX253/Parl white 1360 1100 260
CS lightning DX253/RoyalBlue 1330 1060 270
CS Seabream DX 真鯛 283 strong 1180 840 340
SHIMANO 海攻 ヒラメリミテッド S270 1150 580 570
マミヤOP インストラクターキャロナック20-270 1000 650 350 改造竿(バランスを考慮したガイド配置に変更)
マミヤOP インストラクターキャロナック20-270 1000 660 340 改造竿(普通のガイドをLCガイドに変更)
Daiwa リーディングXゴウイン 265s 1270 940 330
Daiwa Deeo 100-180 1800 1600 200
Daiwa インターライン 潮流 30-350 840(890) 測定不能(480) (410) ナマリが地面に付いてしまって測定不能。
水平位をずらして測定
Daiwa インターライン 潮流 50-390 740(570) 測定不能(290) (280) ナマリが地面に付いてしまって測定不能。
水平位をずらして測定
インディペンデンス MADAI Special 280SS 880 560 320
インディペンデンス Bay Special 180SS 1580 1420 160
インディペンデンス Ensei limited 215H 1570 1380 190
インディペンデンス Bay limited 210H 1690 1450 240
alphatackle MPG Model 6LBS 250 HeadQuater SnipRed 1400 1120 280
alphatackle Medalist メバル 270 980 730 250
カスタム(イクシーク) 2.4m 1630 1370 260 kajikiさんからの頂き物です
無名(カスタム グラスソリッド 1.71m 1360 1180 180
不明 2.7m 1340 960 380 どこかの竿をローライダーガイドに変更
TENRYU JUG&BAIT JB240-50 SHAKURI 1440 1170 270
上島Special 弁慶 250H 1460 1200 260
GOOD Fishing HIRAMASA(2.9m) 1120 800 320 メーカー等は不明
喰わせ真鯛ひらめ 270LR 1060 750 310 メーカー等は不明
無名(2.75m) 1330 980 350 超重くて数匹釣って使わなくなりました。

一番柔らかいのがSHIMANOの『海攻 ヒラメリミテッド S270』。一世を風靡した理由がわかりますね!古い竿ですが『Daiwa インターライン 潮流 30-350』も柔らかい竿です。こういう竿は置き竿釣法にはもってこいの竿です。特に置き竿での数釣りではその効果はピカイチでしょう。でも大物のリフティングには不向きの竿です。もし、こういう竿で大きいのが来てしまったら竿を絶対立てないことです。竿を立てたら竿がぶれてしまうのでとても釣り辛く、それが故にヒラメに主導権をとられてしまうからです。もし大物が掛かってしまったら、どんなに立てても水平位までです。そうすることによって竿の先の方の弾力は消され、バットの反発力だけで釣る事が可能ですから釣り師側に主導権が移ります。しかし、そうすると竿の弾力がほとんど生かせませんので、いいリールを使ってドラグで勝負するしかなくなります。リールに関しては後述しますが、いいリールを使いこなすことが出来ればこういう柔らかな竿でも大物との勝負が可能になります。とは言うものの、竿操作が拙い僕ですからそんな緻密で繊細な釣りは出来ません。よって、ある程度は竿に頼ることを考えなくてはなりません。となるとどの変が良いのでしょうか?上記の表を見てもらって、おおむねでお話しすると差が200以下が硬い竿、200〜400が中くらい、400以上が柔らかい竿と言っていいと思います。
 それともう一つ大事なのは竿自体の重量と重心の位置です。手持で釣る場合に大きな影響があると思われます。特に僕の場合の手持スタイルはご存知な方なら理解していただけると思いますが、これがとても重要なのです。一般的な手持のスタイルでも重心が先の方にあると持ち重りがしますし、魚への違和感が大きくなってしまうと思います。そこで上記の竿の重心の位置を測ってみました。計測方法は実際に使うリールとナマリを付けて行います。測定方法は下の写真もように、幅1pの板にリールと80号のナマリを付けた竿を乗せてバランスを取り、竿尻からの距離を測りました


こんな感じで測りました。脚立の上の黒い棒に見えるのが厚さ1pの板です

竿の名前 竿の重量(g) 重心の位置(竿尻からの距離) 備考
CS lighnting DX283/Bloodred 600※1 860※2 (3.29)
CS lightning DX253/Parl white 494 850 (2.98)
CS lightning DX253/RoyalBlue 440 850 (2.98)
CS Seabream DX 真鯛 283 strong 526 920 (3.08)
SHIMANO 海攻 ヒラメリミテッド S270 290 970 (2.78)
マミヤOP インストラクターキャロナック20-270 344 995 (2.71) 改造竿(バランスを考慮したガイド配置に変更)
マミヤOP インストラクターキャロナック20-270 312 1005※2 (2.69) 改造竿(普通のガイドをLCガイドに変更)
Daiwa リーディングXゴウイン 265s 375 910 (2.91)
Daiwa Deeo 100-180 275 820 (2.20)
Daiwa インターライン 潮流 30-350 376 1150 (3.04)
Daiwa インターライン 潮流 50-390 355 1280 (3.05)
インディペンデンス MADAI Special 280SS 580※1 910
インディペンデンス Bay Special 180SS 475 570
インディペンデンス Ensei limited 215H 650※1 740
インディペンデンス Bay limited 210H 500※1 790
alphatackle MPG Model 6LBS 250 HeadQuater SnipRed 415 930
alphatackle Medalist メバル 270 136 920
カスタム(イクシーク) 2.4m 320 690
無名(カスタム グラスソリッド 1.71m) 255 690
不明 2.7m 289 1000 どこかの竿をローライダーガイドに変更
TENRYU JUG&BAIT JB240-50 SHAKURI 320 940
上島Special 弁慶 250H 700※1 860
GOOD Fishing HIRAMASA(2.9m) 600※1 910
喰わせ真鯛ひらめ 270LR 275 970
無名(2.75m) 650※1 1030

※1は50g単位のハカリを使用
※2は重心位置にガイドが来てしまったので数値が僅かにズレテいるもの

この重心の位置が実釣にどのように影響するかは、ここを訪れる方のレベルなら書くこともないので割愛させていただきますが、ここで一番申し上げたいのは、手持で釣る場合は上記した竿の硬さより、こちらの重心の位置を考えた方がよりヒラメ釣りに効果的な竿を選ぶことが出来ると思います。


【ガイド】
ガイドの話が出ましたので私見を書いてみようと思います。ガイドは富士工業が独占している感があります。性能もヒラメ釣り程度の物であれば最高級と思われます。SiCの採用、そしてフレームの形状が我々釣り人側のニーズに合っているからです。ただ、改善の余地はまだまだあるので、これからの改善を望むばかりです。最近市販されている竿のガイドをみてみるとLC+LDBガイドであるものが多いです。LDBガイドは一本足のガイドでブランク(竿の本体)の動きを阻止せず、ガイドリングが傾いているので糸がらみも少ないというものです。というと完璧なガイドのように思えますがそうではありません。一本足のガイドは二本足のガイドに比べて弱いのです。誰が考えてもこれは当たり前のことです。勿論実釣では充分な強度を持っていますが、持ち運びなどの時に少し大きな力が掛かったりするとすぐに角度が変わってしまったり、固着してしまった時に何とか外そうと努力したりするとどうしても足が歪んでしまいます。。・・・ここで蛇足ではありますが、ちょっと某釣具メーカーの裏話から想像した事なのですが、某メーカーでは竿はとにかくカタログスペックだけを重視、強度などは完全無視で、とにかくできるだけ安価にして売ってしまうことを第一に考えているようです。メーカーにしてみれば売ってしまえばこっちのものって考えです。壊れれば修理代がいただけますから。要は売る時は安くしておいて、売ってからの修理で収入を上げることを考えているのです。竿を修理に出したり、パーツを購入したりしたことがある人は『なんでこんなに高価なの?』と疑問を持ちながらも、直さなきゃ釣りが出来ないので、泣く泣く大枚を費やした経験があるのではないでしょうか?で、話を元に戻しますが、そういう意味からもこのLDBガイドはメーカー寄りの部品と思えて仕方がないのです。勿論、LCガイド(二本足)に比べてブランクの動きを阻害しない、竿先重量の減少(持ち重りの減少)などもありましょうが、ほんの僅かの違いです。総てをLCガイドにしてしまった方が安心して使っていられますし、そんな僅かな違いで釣果に差が出るとはとても思えません。丁寧に使えばどちらのガイドでもいいのですが、ガイドに細かな配慮をするくらいなら釣りの方にその神経を使った方がいいに決まってます。

LCガイド  富士工業株式会社のHPより

そもそも持ち重りに一番影響するのは竿のガイドではなく、使用するナマリですから。また、二本足のガイドがブランクの動きを阻害する件に関してですが、その件に関しては確かです。要はガイドが取り付けられた二本足の間の竿の撓りを阻止してしまいます。よってその分竿が硬くなるのです。しかし、これは竿を作る側の事であって、我々は出来上がった物を買うのですから全く問題はありません。どういうことかと申しますと、竿を作ったことがある人なら分かると思いますが、竿はブランクのみの時と、ガイドを付けた時と、塗装を終えた時とでその調子はかなり変わるのです。そのガイドを付けた時の調子の変化が(足が1本と2本で)大きく変わるということです。要は竿をガイドのフレームが補強してしまうわけです。となると、作る側が予定していた調子より硬い調子の竿が出来上がってしまうのです。ですから竿を作る時や改造する時には必要な知識ですが、普通の人は出来上がっている竿を購入するのですから、この事はまったく関係のないことです。そんなことから理想的にはT-LCSGガイドをメインにトップにT-MNTTかT-MNSTガイドを装着した竿が理想だと思います。

富士工業株式会社のHPより

かしながら、そういう竿は上記のようなデマからかあまり売られていないようです。どこかのオリジナルで探すか、カスタムで作ってもらうか、調子の良さそうな安価な竿を購入してガイドだけ買って付け替えるしかないでしょう。現在の富士工業株式会社の販売法は知りませんが、昔は単体でのガイド販売はしてくれない大名商売をしてました。要はセットでしか売ってくれなかったのでその辺を確認してからでないととんでもなく高価な竿になってしまうので要注意です。
 また注意しなくてはならないのはガイドの数です。少ないのは一番良くないですが、多けりゃいいってものでもありません。ヒラメ釣りの場合はほとんどが糸が竿の上を通過するので竿の上側にガイドがあります。そして魚が掛かって竿がしなると、ガイドとガイドの間では撓った分だけ糸が竿に近付きます。ですからガイドの間隔が離れていると糸が竿に擦れます。要は糸にダメージを与えてしまうのです。ですから、理想的なガイドの間隔は、竿が折れる寸前までしならせた時にギリギリ竿に糸が触れない間隔にガイドが設置されているものです。ですから竿の硬さや調子によって違って来ます。また、最近“理想的な釣り上げ方”と賞賛されるショートポンピングを駆使される方はガイドの数が減らせることも付記させていただきます。

【リール】
 相変わらずDUEL 12 Speedyを使っています。何ゆえこのリールに固執するのかというと、その優れたドラグ性能および故障の少なさ&もし故障してもその場で直す事が出来る構造が気に入っているからです。DUEL 12 Speedyは製造が中止されてから久しいのですが、今でも優れたドラグ性能は購入時のそれとほとんど変わりません。製造が中止されたのを知ってからいくつか他のリールを使ってみました。でもこのリールほどのドラグ性能を持ったリールが見つからないので、今でもこのリールを手放せないのです。現在6個のDUEL 12 Speedyを持っていますのでしばらくは困らないとは思うのですが、もしこれを超えるようなリールがあったら即買い替えをします。ちなみに僕が欲しいのは兎にも角にも卓越したドラグ性能です。加えて、できたら下付け(スピニングリールみたいに)にできるようにしてもらいたいです。ガイドの数を減らすことができますので。しかもリールを竿の下に付ける事によって竿を持った時に安定してくれるはずです。そうすれば経済的ですし、ガイドのトラブルは減るし一石何鳥の長所が生まれてくるはずです。リールの下付けは内部に一個ギヤを入れるだけなので少しも難しいことではないと思うのです。どこかのメーカーで作ってくれたら嬉しいなぁ・・・。
 で、その使い方がまずい人を多々見かけますので、これは基本ですのでくどいようですが一応書いておきます。
 まず使う糸の強度を測ります。リールから糸を引き出し、その先端に吊り下げ式ハカリを縛り付けてリールをロック状態にして引き、糸が切れる時のハカリの値を読みます。これは最低3回はやってください。そしてその平均値を出します。このとき、結び目で切れたものは却下します。カウントしないで下さい。それは糸の強度ではなく結び目の強度ですから。したがってこの計測には糸の強度が100%出せる結び方を習得する事が最低必要条件となります。100%の強度が出せると言われる色々な結び方を実際にやってみて、一番結びやすい(自分に合っていると思われる)方法を選び出し、練習を重ねて100%の強度が出る結び方が出来るくらいの人でなければこのリールを使うだけの技術はありません。間違っても購入時にパッケージに表示してある強度を信用しないで下さい。糸は製造されてから半年くらいが一番強度が上がり(ナイロン)、そしてその後どんどんと強度は落ちて行きます。ですから、使う時の強度を知る必要があるのです。そして糸の強度が判ったら、またハカリを糸先に結んで、今度はロックを解除してドラグが出るようにしてから引っ張ります。その時の数値が糸の強度の1/4〜1/3になるようにドラグを調節します。スタードラグのリールを使っている人はここまでで終了です。そして釣っている時はドラグを絶対にいじってはいけません。スタードラグの場合は一旦動かしてしまうと二度と同じドラグ設定に戻せないからです。で、レバードラグの人はレバーをMAXの位置にした時にドラグ値が糸の強度の1/4〜1/3になるように設定しておきます。で、実釣時に普通にドラグも滑らずに釣れてしまうようなサイズなら問題はないのですが、大物が掛かってドラグが滑ってどんどん糸が出て行く時が問題です。この時、ドラグを締めてしまう人が多いのです。勿論ドラグ値が糸の強度の1/4〜1/3に設定してあるので少しくらいなら上げることは可能です。しかし、こんな魚が掛かる前には糸に海草や色々なゴミなどが触れて沢山の傷が付いているのです。これでドラグを上げてしまうと糸が切れて当たり前なのです。ドラグが滑ってどんどん糸が出て行くようなときにもし操作するなら、逆にドラグを下げてどんどん糸が出るようにしなくてはなりません。糸がどんどん出ている時っていうのは魚がガンガン引いている時なのですから、ドラグ値を上げたら切れます。加えて糸が出た分、糸と水との抵抗も増えています。この水との抵抗は思ったよりも大きく、チャンスがあったら釣り始める前か釣りを終えた後、船が走っている時に何も付いていない糸だけを20〜30m出してみてください。結構な重さを感じるはずです。この抵抗が糸が出た分増えるわけです。こうして糸が出る時には糸を出して上げて、ドラグの出が止まった時に再びレバーを元のポジションに戻せば元通りのドラグ値になっているのですから再びファイトを開始し、またもしドラグが出たらドラグ値を下げて、の繰り返しをしているとどんな魚でもいつかは疲れて来てだんだんと寄って来て取り込めるのです。先にも言いましたがスタードラグのリールを使っている人は一旦ドラグ値を変えてしまうと元もには戻せませんので、しっかり調整したら糸が出ようと出まいと絶対にドラグ値を変えないで下さい。スタードラグはレバードラグのような気の利いた使い方が出来ないリールです。ちなみに時々見かけるスピニングリールもスタードラグと同じです。釣っている最中にドラグ調整が出来るのはレバードラグだけです。だからレバードラグのリールじゃないと極めた部分では使い物にならないのです。

【仕掛け】
 ここを訪れるくらいの人なら市販されている仕掛けや船頭さんの仕掛けを使っている人はいないと思いますが、もし居たとしたらそのレベルの人にはこのWebはまったく意味を成さないので即刻他のヒラメ釣りの基本が書いてあるページに行ってください。仕掛けは自作が基本ですから。船頭さんに魚がいる場所に連れて行ってもらって、船頭さんの仕掛けや市販の仕掛けを使って船頭さんが言う通りにやって釣れたって、それは自分が釣ったことにはならないのは基本中の基本です。このことは奥義でも述べました。
 まずは一本鈎仕掛けを使うことが僕の基本です。過去に二本鈎(孫鈎付きの親・孫)仕掛けを使っていましたが、イワシの弱りが早いこと。手前マツリが多くなること。外せない根掛かりが多発すること。タモ入れの時に大物だと孫鈎がタモに引っ掛かってバラシてしまったりしたことがあること。また、オマツリの時に親・仕掛けだと解き難くて他の人に迷惑を掛けること、仕掛けのセットが面倒くさい事。そもそも二本の鈎が付いていないと掛からないような魚は釣りたくないことなどが一本鈎仕掛けにした理由です。一本鈎仕掛けにすることにより上記のような問題は一掃されます。しかし、いい事ばかりではありません。一本鈎仕掛けの欠点は小物が釣り辛いこと。ヒラメが喰い付いたときに餌が鈎から外れやすいことの二点が欠点です。その対策は竿を出来るだけフリーに持つことによって両方の欠点に対処できます。後者に対しては、餌をしっかり付けることも重要です。イワシの上顎の吻端から2mm程度の所にある硬い部分のど真ん中を刺し抜くことが大切です。このWebをご覧になった以上、もう乗り合いで親・孫の二本鈎の仕掛けは使えませんね!だって他の人に迷惑を掛ける仕掛けなのですから。これでも二本鈎仕掛けを使いたい人はまずは自分の性格を変えることに重点をおいて下さい。乗り合いは仕立てではないのですから、他の釣り人に迷惑になることが判っていながらそれを続けることはそれだけで人間的に失格です。
 仕掛けでもっとも良く聞かれるのは「ハリスの長さと捨て糸の長さをどのように決めてるのか?」という質問です。これに関する決定打はありません。ってか、どんなんだって釣れます。ですが、やはりそれでは面白くなさ過ぎるので自分なりの決定方法を作って釣った方が、より“釣った感”は充実すると思います。そこで、僕の決定方法を書いておきます。

【ハリスの長さの決定法】
 僕が常宿としている船は基本的には“横流し”と言われる釣り方の船です。スパンカー(帆)を立てずに自然に任せて船を流しながら広範囲を探って行く釣り方です。その船で使われている、いわゆる“船頭仕掛け”は捨て糸:ハリスが50:120です。通常はこれを底付近でズリズリ引きずると、底は平らではないのでナマリが引っ掛かったり外れたりして餌のイワシが水平にツッツッツーーーと動きます。ヒラメは横の動きに敏感ですから、ヒラメが喰い付いて来るっていう寸法です。しかし、潮が動かない日は底に対して船があまり動かないので底をズリズリ出来ません。こうなるとお手上げ状態です。しかも波が低い状態だと餌のイワシはあまり動かず、ほとんど自力で泳いでいるだけということです。勿論活きがいいうちはこれでも喰って来るでしょうが、もっと積極的に攻めて行かないと納得出来る釣りにはなりません。

『潮が流れない=横流しができない=縦釣り』という方程式が成り立ったある日、ハリスの長さを決定の基礎が判ったように思えました。

一般的に横流しの船で使われる仕掛けは、それぞれの長さが[捨て糸<ハリス]としているのですが、縦の釣りの時は[捨て糸>ハリス]が多く使われます。その理由は、横流しで釣る場合、仕掛けは潮に引かれて傾きますので、[捨て糸>ハリス]仕掛けを使うとナマリより餌が先行してしまいます。すると底に居るヒラメがその餌に喰い付こうとすると捨て糸が邪魔してしまうのです。


もっとも、イワシが相当弱らない限り、イワシはナマリの真後ろには位置しているわけではありません。下図のように仕掛け対して少し横にずれて位置します。


このまま横に移動していますのでイワシが移動した側から喰い付いてくれれば大丈夫なのですが、逆のばあいは上記のようなことが起こっているようです。しかし釣り人側からそれを操作することは出来ません。ところが今回のように“潮が動かない”と言われるような状況下では捨て糸も直角近く立っています。


これならヒラメが喰い付くときにそれほど邪魔にはならないのです。それに比べてハリスが長い仕掛けはナマリが動いてもイワシまで動かすためには相当大きな竿の上下運動が必要になりますので、それをしない限りはほとんどの場合、下図のようにハリスが弛んでしまうので、餌のイワシはタラタラ泳いでいるだけでヒラメの関心を引かないのだと思います。


ですから、こんな場合はハリスを短くして横の動きは少なくなりますが、縦の動きを多く出すようにしてヒラメの気を引く事が大切であるように思えました。
 ではどうして今までそれに気が付かなかったのかと言いますと、“潮が動かない”という言葉に惑わされていたのです。“潮が動く=海流が早い”つまり“潮が動く(海流が早い)→バクテリアに酸素が供給される→バクテリアを食べている極小動物が活性化→それを食べている小動物が活性化→小動物を食べている小魚が活気付く→そしてそれを餌としているヒラメも活性化する”という方程式を頭が思い描いていたのです。だとしたら船に乗っている自分には何もできないと思っていたのです。ところが、現実に潮が動かないと言っているのは、海底に対する船の移動スピードで、海流のスピードではないことが判って来たのです。要は海底に対して船の移動距離が増えればそれだけ広範囲に探る事ができ、このことは沢山ヒラメに出会うタイミングが増えるわけですから魚信が多くなり、結果的に沢山釣れるわけです。となると、
船頭さんが『潮が動かない』というのは、船の海底に対する移動量が少ないと言っていることなのです。要は“潮(海流)”とはほとんど関係ないのです。関係していたのは風です。船は固定されていませんから風を受けるとそれを孕んで流されて行きます。これにわずかなら海流が関わって、その足し算・引き算で船の移動スピードが決まるのです。ほとんどの場合、海流より風の方が速度が早いので、大きく影響するのは“潮”ではなくて“風”だったのです。船頭さんが使う“潮”という単語が一般的な意味ではなく、専門用語として使われていたということがキモでした。風と底、つまりは一番かけ離れた位置の相関関係が“潮”の概念でした。そしてそれによってイワシの動きが変わるのです。そしてこれが判ればそれに合わせたハリスの長さが自ずと決まるというものです。

 では実釣に際してどうしていくか?ですが、まずは自分の基本的な長さを決めてしまうことです。そしてその日の状況に合わせて船の上で長さを調節します。僕の場合はハリス100p、捨て糸110pが基本です。なぜこの長さを基本としているかといいますと、僕が良く行く船の常連さんがだいたいハリスが100p〜150pで、捨て糸は50p〜同じくらいの長さを使っている人が多いのです。でも、僕が100pとしているのは、本当はハリスを150pにしたいのですがIGFAルールの兼ね合いがあって(先糸がどうしても3m欲しい)、150pで記録魚が捕れてしまった場合にファールになる可能性が高く、それがために100p以下でやるしかないのです。ですからIGFAルールに従わないのであればハリスは150pが基本となっていたことと思います。ここで、この読者の皆様から‘そんなに長いの?’って声が聞こえてくるように思えます。確かにハリスが長いと他の人とオマツリが多くなるので混雑した乗合船では長ハリスは慎むべきです。でも、ここで敢えて長くしているのは、仕掛けを調節する際に短くすることは簡単ですが長くするのはできないので(ってか、作り直ししかありません)面倒臭いのです。よって、まずは長めに設定しておいて徐々に短くしていくのです。僕の場合はまずは捨て糸の調整から始めます。概ね捨て糸の長さと釣れて来るヒラメの大きさは比例しますので、覚悟を決めて詰めて行きます。特に船中ボーズが僕だけとなったり、それに近い状態になって船頭さんからゲキが飛ばされる時などにやることが多いです。小物でもいいからとにかく一枚を釣ってボーズを逃れなくてはならない状況を踏破するための手段です。ですから、こんな時に釣れて来るのはほとんどがソゲかそれに近いものです。捨て糸を詰めるということは小物狙いにするわけですから、仕掛けそのものを変えて二本鈎の仕掛けにすることが多いです。釣り方も当然それに準じます。でも、こんな短い捨て糸でも5kgなんて掛かったこともあるので油断は禁物です。これから判るようにヒラメは餌が高い位置を泳いでいる時に大物が、低い位置に餌が泳いでいるときには小物が喰って来ることが多いと言われ、実際、僕もその意見には賛成です。でも、時々低い位置の餌に大物が喰って来ることもあります。これは全体的にヒラメの活性が低い時だと考えられます。要は大物も高くまで餌を追いたくない状況なのだと思えます。こんな時は大物だけを狙って釣ることはほぼ不可能なので釣れても面白くありません。やはり、大物は“狙って釣って”初めて感動があるのであって、たまたま釣れてしまったのでは嬉しさは間違いなく半減しています。ですから、僕にとってやはり大物は“狙って釣る”ことが大切なのです。次にハリスを詰める場合です。ハリスは基本的に船上で詰めることはしません。結び目がしっかりしていないといざの大物が来た時に外れてしまいそうな気がするのがその理由です。ヒラメ釣りの場合はほとんどの場合やっている時は手が悴んでいますので、まともな結びは出来ないと思っていた方が無難です。よって、ハリスを詰めるというよりはハリスが短い仕掛けに取り換えてしまいます。面倒臭いことなので実際にはあまりやることはないですが、どんな時にするかと言いますと、釣っていて何かの理由でヒラメがイワシを追いかけられないことが想像付く時です。秋田の大物を沢山釣っている船頭さんは『大物はハリスが短い方が喰って来る。きっと狙いを定めやすいのが原因だと思う』と言っていました。この船頭さんはハリスは12号以上で長さも20p以下(基準は12p)として釣っています。そしてこの仕掛けで信じられないような大物を沢山捕っています。加えて、僕が現在持っている他のクラス(12Lb)の5.05kgも20pハリスでの釣果です。この時は超凪で、も置き竿で釣っていたので、少しでも誘いが掛かるようにと思って極端な短ハリスにして釣りました。こう考えると超短ハリスも条件によっては案外捨てたものではないかもしれません。時々しか使わない超短ハリス仕掛けですが、今後はこういうとんでもないと思われる仕掛けもどんどんと使って知見を増やして行きたいと思っております。


【ハリ(鈎)】

 ハリそのものに関しては専用の物が売られていますが、僕はどうしても好きになれる物がありません。基本的に小さ過ぎます。僕が最近気に入っているのがアジ鈎です。フトコロが深いのでバレが少なく、幅が狭いのでヒラメの口に入りやすい形態だと思えるからです。Topに出した画像のヒラメを釣った時に使ったハリもアジ鈎の18号です。これで口の周りの骨をやっと跨いでいた状態です。今まではムツ鈎の18号を使っていたのですが、なんとなくこんなことじゃないかと思えたのでネムリ系ではない鈎を使って釣ったものです。ネムリ鈎は同じ号数の場合、鈎先から軸までの距離が少なくなるので、もしかして鈎が口の周りの骨を跨げないのではないかと考えたのです。本当に僅かな事ではありますが、顎の骨が0.5mm太くなれば魚体はどのくらい大きくなるか?を考えるとこの僅かな違いがどれほど大きなものか?が解ると思います。しかし、まかり間違えば10kgオーバーだっていないわけではないので、現在はアジ針の20号に変えました。勿論小さな鈎でも釣れないわけではありません。いい所に良い具合に掛かり、それなりに上げられればどんな鈎だって釣れることは解っています。しかし、これは狙ってできるものではありません。偶然釣れても嬉しさは半減してしまうのでやはりこのくらいの大きさを使って行こうと思っています。
 その鈎を僕はこのように改造して使っています。まずは鈎先を研ぐことです。タナゴ釣りなどでは普通にやられていることですが、ヒラメ釣りではあまりやられていないのではないかと思います。そもそも鈎を研ぐことは細糸(2lbなど)で釣る時に、少ないテンションでも掛かるようにと思って始めたことです。その効果があったかどうかははっきりしたデータはありませんが、一つ言えることは餌もちが格段に上がることです。イワシを鈎に付ける時、特に上顎にしっかり付けたい時はそれなりに硬い場所を狙って鈎を刺し通すわけですからそれなりに力を加えなければなりません。それがイワシにとっては相当なダメージになります。この時に鈎の鋭さが甘いとどうしてもイワシは弱ってしまいますので、刺す時に手で感じる抵抗を覚えておき、力をかけないと刺さらないようになったような鈎になってしまったら仕掛けごと変えます。あんな硬い金属が磨り減る頃にはナイロンやフロロカーボンなんかは相当痛んでますから。それと、元気がいいイワシだと釣っている最中に鈎が深く刺さって他のところを傷つけたり、はたまた刺さってしまって鈎先が出ていなかったりと、悪い状況に陥ることがあります。これを防ぐ為に一般的には滑り止めにビーズを付けたりするのですが、これは剥がれてやすくてすぐに移動してしまったりします。ですから僕は下のようにビニールパイプを差し込んでビーズ代わりにしています。


この方法だと移動することはないので安心です。しかもこの方法でもっともいいのはハリスの結び目から切れ辛いことです。きっとビニールパイプの弾力がハリスの結び目を保護するのではないでしょうか?コツはビニールパイプでミミは覆ってしまうことです。ミミがハリスにスレて切れることも考えられますので。市販されている仕掛けや船頭さんの仕掛けを使っている人には出来ないでしょ。ですから、仕掛けくらいは自作してください。


【手持ちか置き竿か?】
僕は基本的に置き竿派です。僅かではありますが、手持ちより置き竿の方が魚信が多く出るような気がしているのです。ただ、掛け易いのは断然手持ちだと思います。ですから、いつも置き竿にして次の場合は手持ちにします。
 @気が向いたとき
 A手に力が余っているとき
 B他の人が手持で釣った時
 C船頭さんにやる気がないと思われたくない時
 D波が高くて置き竿では跳ねてしまう時
 E硬い竿を使用して、軟らかい竿と同等な性能を期待するとき
 F他の釣り人が置き竿で全然釣れていない時
置き竿で注意しなくてはいけないのがロッドキーパーの使い方です。先にも書きましたが置き竿の方が手持ちより魚信が多くなるように思うのですが、その一番の理由が自動誘いだと思います。要は船の揺れで放っておくだけで自動的に誘いが掛かるのがその要因だと思っています。ただ、誘いも沢山かければいいというわけではなく、その日の状態で一番ベストと思われるところがあるようです。ロッドキーパーには竿の角度を調整出来るようになっているものが多いので、その角度で誘いを調整できます。元竿が水平より下に来るようにセッティングすると竿先が跳ねなくなります。これが基本です。そして、その日の波の高さ、潮の流れ、風の強さを考慮して竿先の上下を見ながらその日の状態に合わせて行きます。誘い過ぎるとイワシが弱ってしまうからという理由で誘いを掛けない人も多々見受けられますが、完全に本末転倒してしまっています。弱ったイワシをまるで活きがいいように見せかけるのが誘いなのですから、イワシが元気なうちは当然誘いの必要はありません。僕も新しいイワシに代えた時は、少なくともイワシの動きが手に伝わって来ているうちは手持で一定のタナをキープするようにしています。そしてそれが終わった後に置き竿にするのです。一匹のイワシを付けてから交換するまでの時間を考えたら、弱って余り動かなくなってしまってから使っている時間の方が俄然多いのは誰でもそうだと思います。その俄然多い時間をイワシに任せておいたのではその結果は言わずと明白です。僕の場合、ほとんど一本鈎仕掛けで釣っているので餌が弱って交換するまでの時間はすこぶる長いです。魚信が全く無ければ5匹もいれば一日もってしまうくらいです。
 基本的に持ち竿だと腕が疲れてしまいます。僕が良く行く船はナマリが80号に統一されています。これを手持で操作するのには、短くて軽い竿を使うしかないと思います。でも、ナマリの大きさは船で決まっていますし、わざわざそのために短い竿を揃えるのも荷物は増えるし。。。だから置き竿で釣っている時間が長くなってしまうのです。もっとも体力のある人はどんどん手持で積極的な釣りをしていただきたいと思います。

【魚信(あたり)】
「魚信」というのは魚からのシグナルであって「当たり」と書くのは可笑しいです。「当たる」を英語でいうと「ヒット(Hit)」です。こんな可笑しなことを普通に話している日本人は、海外に行って頭を叩かれたり・・・。馬鹿丸出しですね!正しくは喰って来たことを感じているわけですから『バイト(Bite)』です。内容については『奥義』の範囲を超えていませんので割愛させていただきます。

【合わせ】
『Hook up』とか『hook on』と言います。
 掛かった時は日本語では『乗った』といいますが、英語では『rode』などとは言わず『Strike』です。こちらも内容については『奥義』の範囲を超えていませんので割愛させていただきます。

【やり取り(Fight ファイト)】
魚を掛けてから取り込むまでの間をやり取り(Fight ファイト)についてです。
当方はこれがあまり得意ではありません。センスがないというか、瞬間瞬間の対応力がないというか。。。まだまだ研究の余地が多く残っているのがこの分野です。当方、釣りが上手くなりたくて沢山の名人・達人と言われる人と釣行を共にさせていただき、そのノウハウを見せていただいておりますが、その一人にこの分野に長けた人がいます。自分では上手く出来ないので、僕が見た彼のファイトを紹介させていただきます。先日は僕が1枚釣る間に彼は3枚を上げてました。竿は違いましたが、糸とリールは同じ物を使っていました。釣れて来たヒラメのサイズはほぼ同じか少し彼の方が大きかったのに。彼が釣るヒラメは本当にスースーと上がって来て、少しも抵抗していないように見受けられます。そして船頭さんが差し出すタモに素直に入って行きます。


ヒラメが催眠術にでもかかったようです。

彼の釣りの凄さはそれまで何度もご一緒させていただいたので分かっていたのですが、それを決定付けたのが2001年12月13日でした。この頃の僕は、彼と週二回ペースでヒラメ釣りに出かけていました。この頃は福島原発事故の前ですので、日立や鹿島にも出かけていました。そしてその日は鹿島で竿を出していた時でした。僕の2人隣で釣っていた彼が上げるのに時間が掛かっています。上記したように、普通のサイズだとあっという間に上げてしまう彼ですから相当な大物であることは予想できました。
 彼はグランダー(魚種は問わず1000Lb以上の魚を釣った人に与えられる称号。彼はカジキでこのい称号を獲得しています)ですし、僕らのような一アングラーとはやはり一線を画している事はこの人の釣りを一目見れば判ります。で、そういうファイトをするにはどうしたら良いか?が僕がまだ良く解っていないのです。ちなみにトップに掲載した日本記録の8.5kgを上げる時も数回の反撃に合ってます。この人のように反撃させない(もしくは反撃する気を起こさせない)釣り方が出来れば、どんな大物が来ても捕れるように思えてしまいます。
 僕にはとても出来ない技ですが、目指すのはこの人の釣り方です。出来ないので、見ただけの話で恐縮なのですが僕の主観で感じる、他の人との違いを書きますと、まずは魚信があって、少々送ったり止めたりするところまでは一緒です。その後、一旦竿を下げながらリールを巻き、糸を張りながらわずかに聞いているように見えます。その後糸の張りが取れたら徐々に竿をゆっくりと持ち上げて来てヒラメを底から剥がす作業に取り掛かります。この作業に案外時間を掛けてます。そしてだんだんと竿を起こして来るのですが、決して竿を水平より上には上げません。いわゆるショートポンピングってやつです。するとヒラメがどんどん加速的に此方に泳いで来るようで、それに合わせてどんどん糸を巻き取ります。この時、竿先の位置は船頭さんからは離れたところでやっています。そしてヒラメが見えて来て、取り込む段階になってやっと竿を水平より上げ、水面に出たヒラメを滑らせるように船頭さんの方に導きます。船頭さんにとってはヒラメが自分の方に向かって水面を滑るように来るのですからタモをヒラメの前に差し込むだけで自動的にヒラメは頭からタモの中に入ってしまいます。こういう釣り方っていたって普通でしょ?でも、実際に見ているとこれが全然普通じゃないんです。なにせ、その間ヒラメはじーーーっとしているのですから。時々彼が掛けても暴れるヒラメもいないわけではないのですが、その確立がものすごく低いのです。そしてもし暴れたとしてもすぐに大人しくしてしまうのです。どうやっているのでしょう?彼とは20年以上は一緒していますが、いつかは彼のようなファイトをすることが出来るようになるのかなぁ???と思ったまま時だけが過ぎてしまい、いまだにこのテクは出来ずにいます。僕の中ではまさにこれは秘儀です。彼のように大物を沢山釣った人だけが知る“何か”がこのテクを作り上げているのだと思います。


【狙って釣る】
 “釣った”と“釣れた”の違いはここまで読んでくれた諸氏にはご理解いただけると思います。そしてここまで来られた方ですから“釣れた”で釣った魚は普通はリリースですよね!ここで“ヒラメが釣れる”のではなく“ヒラメを釣る”こと焦点にしてみたいと思います。
 まず、仕掛けを自分で作ることは最低条件です。仕掛けも作らない人に“釣った”は一匹としてありません。それどころか他力本願は人の釣り文化の程度を下げますので一生懸命にやっている人たちには迷惑です。次は釣り方ですが、これに関しては他の人の迷惑にならない範囲に於いて色々と試して知見を得て自分なりの方法を構築していくしかありません。人の釣りを参考にするとかえって自分の釣りが色褪せてしまって、もっといい釣り方がその先にあるかもしれないのにその芽を摘んでしまうことにもなりかねません。自分を信じて日々試行錯誤を繰り返し、自分なりの釣り方を作っていくことが大切です。ですから、基本的には完成された釣りっていうのはないのです。総ての釣りが未完成であり、その未完の部分を埋めるために日々の努力があると言っても過言ではありません。そのための自分だけの仕掛けですし、そのための試行錯誤なのです。次にタイミングです。ところでヒラメって、美味しい時期は知っているのですが、大物の確立が高い時期って何時なのでしょう?数釣りの時期は前の『奥義』に書きましたのでそれを参照にしていただければいいのですが、こと大物に狙いを絞った場合のタイミングを書き忘れていました。それは・・・・・(続く)