M.Iノット

M.Iノットの特徴は、まず強いことです。加えて特記したいのは長さを合わせられることです。IGFAルールなどで仕掛けの長さに制約がある時などにはとても便利なノットです。

 まず強さですが、巷で“最強ノット”と言われるパロマーノットと簡易比較試験をしてみました。糸(ナイロンの3号を使用)の両端の片方をM.Iノット、もう一端をパロマーノットで結んで糸が切れるまで引っ張て切れなかった方が勝ちです。結果は下記の画像です。10回しかテストしませんでしたが充分な結果だと思います。

一番上の表がパロマーノットとM.Iノットの強度試験です。した二つはM.Iノットと他の結びでの強度試験です。

『P』がパロマーノットで『M』がM.Iノットです。勝った方(切れなかった方)が〇です。両方に〇が付いているのは両方とも結び目からは切れないで糸の途中で切れたものです。つまりは両方とも糸の強度を100%出し切った結びができた時ということです。パロマーノットも強いですが、安定に欠けているのが判ります。パロマーノットの欠点は結び目がまっすぐにならないで奇麗でないこと(ルアーなどでは“泳ぎ”が変わってしまう)と、このように強度ムラができることです。これは最後に結びを締め込むという工程があるために、糸にダメージを与えてしまうからです。しかし、パロマーノットは上手に結べる人だったらそのダメージは最小限になるので糸の強度がほぼ100%出せ、しかも簡単に結べる素晴らしいノットであることに異論はありません。
 
簡単に結べ、慣れればほぼ100%の強度を出せる結びですからパロマーノットは多くの人に愛されています。が、上記のように安定した強度は出せないので、もう一歩先を望む釣り師にはこのM.Iノットがお勧めですです。パロマーノットに比べれば多少の頓雑さはありますが、難易度としてはほぼ一般的レベルです。

 ではその結び方です。

まず最初にサルカンの輪に手前側から糸を入れます。

次に通した糸を再び手前から同じ輪を通します。

ここで一旦締めるのですが、この結びの最大の注意点がここにあります。
それは絶対に道糸側を引っ張らないということです。先端側の糸だけを引いて締めてください。

これがこのノットのキモです!サルカンとの接触は2ヵ所です。画像で左側に位置する糸(道糸本体)はサルカンとの接触点をしっかり押さえてこすれないようにしてください。そして右下の糸(道糸の先端)だけを引いて締めます。もし、左側の接触部分の糸がずれてこすれたような気がした場合は、糸をちょっと出して傷がない新たな部分にずらしてから右下だけを引いて締めてください。ちなみにパロマーノットでも同様に元糸は固定して締め込むのがコツです。

 この後はハーフヒッチを4回行うことにより根付けを作ります。ハーフヒッチの回数は多い方がいいと思いますが、4回ぐらいにしておかないと根付け部分が曲がってしまって奇麗でありません。できるだけ真直ぐな方が何かとトラブルが少ないです。

  

そして今度は逆からハーフヒッチします。

こうして交互に4回のハーフヒッチをしてM.Iノット終了。最後に余り糸を切ったら完了です。余り糸は、根本から切ってしまってOKです。



ちなみに緩めた状態だとこんな感じです。

 御覧いただいて気が付いたと思いますが、このノットは糸が鋭角に曲がる所がありません。一般的に、結び目が切れるところ(強度が落ちやすいところ)は糸が鋭角にUターン所です。パロマーノットも一ヵ所Uターンする所があるので、理屈で考えてもこちら(M.Iノット)の方が有利(糸の強度を落とさない)だと思います。ちなみにこの根付け部分は船からのヒラメ釣りなど、たくさんの釣りで使われる胴突き仕掛けでは、手前マツリ防止効果も期待出来ます。

 僕はこの結びを思いついてからずっとこの結びを使っています。かれこれ30年は経つでしょうから何千回も巻いていると思います。たくさんの日本記録魚、そして最近取った世界記録魚もこの結びで取らせていただきました。そんな僕ですからこの結びは目を閉じていても出来るくらいです。結びは同じ結び方で結んだつもりでも強度は同じではありません。締め具合や擦れ具合(糸とサルカンや糸と糸などのこすれ)が変わるからです。どんなにいい結び方でも結び方が悪ければ強度は出ません。要はその結び方に慣れることがその結び方で最高の強度を出す秘訣です。このノットでも使い始めは100%の強度は出ないかもしれません。それでも何度も練習し、上記のような簡易試験を何度となく行い、どうしたら最高の強度が得られるのか?を常に考え、精進することが大切だと思います。いつ来る分からない大物に対して常日頃から準備しておくことはとても重要です。



※M.Iノットはモノフィラ(ナイロンやフロロカーボンなど)専用のノットです。PEの場合は変な切れ方をしますし、ある程度の強度は出ても100%とまではいかないので要注意です。PEの接続で100%の方法もありますので、僕にその気が起こったらWeb紹介します。