撥水バッグを半防水に

 特に渓流に行くときにカメラはとても邪魔な存在です。でも、渓流は絵になる場所でもあります。で、色々なストラップを試したりもしたのですが、結局雨や夜露でカメラは濡れ放題。防水の一眼は昔フィルムの時代にNikonが出していたのですが、今のデジイチ(デジタル一眼)では防水のカメラはありません。で、雨の日はコンデジ(コンパクトデジタルカメラ)の出番になるのですが、一旦デジイチで撮りだすととてもコンデジの画像は見られなくなってしまいます。
 そこで今回僕がスタンダードとして使っているカメラ(Nikon D800e+AF-S NIKKOR 24-120mm f/4G ED VR)を渓流に持ち歩くための方法を考えてみました。

 カメラ+レンズで相当な重さがあるので、普通に首から下げていると首への負担が大きく、何より大物が掛かって鈎を外す時に水ポチャしてしまうこともありますし、釣っていても前にカメラがあると餌を取るときなどでかなり邪魔になります。勿論、渓歩きをしているだけでもプラプラしているのでバランスを崩しやすく、危険さえ感じることがありました。そこで、何か良さそうなストラップがないかと思って探したらCARRY SPEED FS-PROっていうのが良さそうに思えました。これは首から下げるタイプではなく肩に背負うタイプだし、ストラップ幅が広いので首への負担が軽くなり、すぐに構えられるのでシャッターチャンスを物にできる気がしたからです。実際使ってみると普段使いにはとても良いのですが、釣りに使ってみると吊り下げる位置が低過ぎて渡渉時にカメラが水没してしまいます。仕方なく片手でカメラを持ち上げて渡渉するのですが、片手が塞がるととても不安な渡渉となります。しかも、もし転んだら一巻の終わりです。加えて、その位置からして朝イチで藪漕ぎなんかしたときにはカメラはビショビショ。まるで雨が降ったように濡れてしまいます。
 このようなことから今回はこのカメラが入る防水バッグを購入しようと考えました。そして色々と探しまくったのですが丁度良い大きさの物はなく、巨大だったり小さくて入らなかったり。僕が望むちょっとだけ余裕がある(あまりぴったりだと出し入れが大変になるので)物は皆無でした。ただ、探していた時にPatagonia Atom Slingというバッグが気になったのですが、大きさ表示にサイズが8Lだけ書かれていて、僕のカメラが入るものかどうか?の判断がつきませんでした。


Patagonia Atom Sling

また防水性に関しては『DWR(耐久性撥水)加工は小雨や雪を弾き、乾燥時間を短縮します。防水性/透湿性バリヤーと併用することで、シェルの表面からの水分の浸透を防ぎ、透湿性バリヤーは内側の蒸気を外へ発散します。』と僕の理解を超えた説明しかありませんでした。一般論としてこのような解り辛い説明があるときはその部分はあまり信用がおけません。いずれにしてもちょっと水をはじく程度の物と理解し、僕の中で購入は却下していました。そんな折、都内で勉強会があってそこに向かう途中『Patagonia』と書かれたお店を見つけました。早速入ってみるとありましたPatagonia Atom Sling 8L。大きさ的には丁度って感じ。しかもセール中。なかなか丁度良い大きさの物はないのでとりあえず買いました。しかし、防水性に関してはやはり信用がおけません。そこで、なんとかこれを防水することは出来ないかと考えました。
 出来たら完全防水がいいのですが、ファスナーが防水の物ではなく普通の物ですから完全防水には出来ません。勿論プロシールみたいな完全防水のファスナーに変えてしまえばいいのですが、僕自身に手芸の自信が無く、とりあえず今回はここからの水の進入は仕方がないと考えました。実際に使っていて思うのは、完全防水であればそれ越したことはないのですが、ある程度の防水ができていれば問題はないと思えたのです。僕の経験でカメラを壊したのはやはり渓に立ち込んでいる時の転倒がほとんどです。転んだ時はすぐに立ち上がるので、その一瞬だけ水が防げれば問題はありません。よって、今回は、中途半端ではございますがファスナー以外の、つまりは布地だけの防水仕様ということでやってみました。
 使用したのは株式会社ユタカメイクという会社で販売している『液体ゴム』という商品。


なるべく目立たないようにクリア色を選びました。

防水の布って生地にゴムや樹脂の裏打ちがしてあるものがありますよね。そんな加工が自分で出来ないか?と考え、もしかしたらこれで出来るかもしれないと思ったのです。Webでの紹介だと僕にとっては都合の良いことばかりが書かれているのでまず大丈夫でしょう。早速注文してみました。代引きでしたのですぐに届きました。一応ボトルに書かれてある事にぐるりと目を通して・・・えっ?ベタ付きが残る?そんなことWebには書かれてないじゃん!・・・もしこのベタ付きがカメラに付いたら嫌です。ということで、まずは紙に塗ってどのくらいのベタ付きが残るのか?を見てみました。五ヶ所に塗って。・・・一ヶ所だけにしなかったのは、あまり酷いベタ付きがあるようならその対策法を考えるためです。また、もしかしたらこの液体の硬化に酸素が反応してベタ付き(未反応エリア)が出るのかもしれないので、もう一ヶ所塗ってそちらはビニール袋を上に置いて酸素の進入を阻止しました。


事前テスト

硬化時間は2〜3日となっていますので、まずはこのまま3日放置しました。しかし、かなりひどいベタ付きが残っています。そこで、紫外線の照射をしてみました。ビニールの物も同じ程度のベタ付きが残り、酸素が原因しているわけではなさそうです。それと、右から二番目には樹脂の粉(UNIFAST POWDER)を降り掛けてみました。これはベタ付きがすぐになくなりました。しかし、この粉自体も粒子が細かいのでカメラやレンズの隙間から入って行きそうで心配です。よって、これは最終手段に取って置き、もしこれしか方法がなくなったらこれを使ってベタ付きをとった後、入念に水洗し、乾燥させてから使おうと考えていました。
 次に考えたのは希釈です。布への使用は、そのままだと固さがあるので布に染み込み辛く剥がれてしまいそうです。出来るだけ染み込ませた方が剥がれ辛く、尚且つ繊維の間に入ってくれればベタ付きも少なくなりそうです。そこで今回は液体ゴム:水(水道水)=6:4くらいにしてみました。あくまでも目分量です。紙コップに液体ゴムを入れて、それより少し少ないくらいに水を足して良く掻き混ぜて使いました。

 まずは購入して来たPatagonia Atom Sling バッグを裏表ひっくり返してしまいます。


裏表でひっくり返したところ

そして、無駄に付いているポケット(普通の人は使いやすいのかもしれませんが、僕はこういうのが邪魔で仕方がありません。)は総て外してしまいます。


メッシュ部分を外したところ。この後マジックテープも取り外します。

縫い糸をカッターで切って外して行きます。縫い目が隠れて外せない所は思い切って切り取ってしまいました。

 
反対側です。左が右になります。

これで準備が出来ました。上記のように希釈した液体ゴムを刷毛で塗りました。


塗った所。塗った時はこういうは白色ですが、後に透明になります。

希釈したのでサラサラした液になりましたので、垂れてもいいように急遽新聞紙を敷きました。平らな面ではないので窪みに溜まって厚塗りになってしまうのですが、これは仕方がありません。表面を塗って二日間放置してみました。予定通り布に染み込んでくれたので紙の時のような酷いベタ付きは少なくてすみました。しかし、希釈してサラサラにしたことで、周りから垂れた液体ゴムが裏に回って下に敷いた新聞紙とくっついてしまいました。一旦濡らして丁寧にこれを除去して今度は裏側です。


塗って一日経過したところです。

新聞紙の上に今度は大き目のポリエチレン袋を敷いて液体ゴムが垂れても大丈夫なようにしました。そして再び二日間放置しました。これで全体が塗れたはずです。クリア色を選んだのであまり目立ちませんが、良く見ると艶が出現しているので(多分)防水加工になったのではないかと思えました。


なんとなく艶々してるでしょ。

これで再び表裏をひっくり返して終了。


完成です。

表にまで液体ゴムが出てきて醜くなるかとも思えたのですが、表は購入時のまま何も加工していなかったようです。これで完成しました。