餌釣り

 渓流釣りと言ってもその釣り方は色々あります。餌釣りはその最も代表的な釣りではないでしょうか。一番安易で一番とっつきやすい釣りだと思います。
 餌釣りというと餌を自然に流して魚に違和感を与えないで口を使わせるのが真骨頂なのですが、僕の釣りはその逆に不自然な動きを与えて魚に口を使わせる特殊な釣りです。逆もまた真なりっていうところでしょうか。
 そもそも僕がこんな釣りを何故始めたかというと、僕が渓流釣りを始めた頃、全く魚が釣れなくて、毎週行っても釣れるのは月に一匹程度。当時は放流がなくて、20cm以上をキープと自分で勝手に決めていた所為もあるのですが、いずれにしても釣技が幼稚だったことは確かです。釣れなくてもこの釣りにぞっこんだった僕は色々と雑誌を買い込んでむさぼるように読みあさりました。そのほとんど全部と言って良いほど自然に流す釣りの紹介でした。しかし、そんな中に今の僕の渓流釣りの師であるT氏が経営する郷土料理店が載っていました。その中に『趣味が高じて店を開く』と書かれた店主の写真も載っていました。店主の温厚そうな顔写真も掲載されていて。。。しかもその所在地が僕の通勤道路の丁度中間に位置していたのです。これは行くっきゃありません。早速出かけてみると、店主からいきなり『釣りするの?』と聞かれました。まだ一言も会話していないのになんで判っちゃうんだろう???と不思議に思いながら、『少し』と答えた僕に店主は色々と聞いて来ました。その話の振りから相当の腕だということは理解できました。回数を重ねるうちに釣りの約束まで取り付けたのです。そして、川に行って見せてもらいました。そしてまずビックリでした。大きな重りに大きな鈎、そして太い糸・・・まるで渓流魚を釣るようなタックルではなかったのです。挙句の果てには(邪魔をしてはいけないと)20mほど離れて見ていた僕に『こっちにおいでよ。そんな遠くじゃ見えないでしょ』と大声で、(よく見えるように)すぐ脇に付くように指示されました。しかも、その直後に見事にヤマメを釣ってしまったのです。この釣り方を見た僕は大きなカルチャーショックを受けました。しかも僕はほぼ実力通りのボーズに対して、彼は30以上のヤマメを魚篭に収めたのです。それも良型ばかりを!いままで如何に餌を自然に流すか?だけを考えてきた僕に、この釣りはあまりにも理解不能でした。しかし、目の前で実際に爆釣されてしまったのですから何とかこの釣りを習得したいと思うのは当然であります。毎日仕事の帰りに寄りこんで毎晩2時頃まで釣りの話をして・・・・・でも店主は嫌な顔一つせず付き合ってくれました。私的ではありますが、ここをお借りしてT氏には感謝の意を表したいと思います。本当にありがとうございました。今渓流釣りを楽しんでいられるのは総てがT氏のお陰だと思っております。
 さて、話を元に戻して・・・・その後当時Mamiya OPのテスター(現在はSHIMANO)である細山氏と出会い、たまに釣りに連れて行ってもらったりしています。細山氏の釣りはご存知のように自然に流す釣り。よって同じ場所を釣っていても、ある程度の面積があれば僕と細山氏のポイントは違うのでお互いに邪魔にならない。・・・良い関係だと思っています。渓流釣りは単独行でないときも多々あります。複数人で行っても、全員がある程度の腕を持っていれば(つまりは魚を脅かすことがなければ)みんなで釣る事が出来ます。よってそんな時にも実に有効な釣りです。
 僕は普通の流す釣りを『線の釣り』、そしてこの釣りを『点の釣り』と呼んでいます。

道具
 竿は頑丈なもの。といってもただ薮から棒に硬いだけでは良くありません。表現は難しいのですが、柔らかいけど芯がピシッとしている竿が良いです。僕が好きなのはMamiya OPの峡本流プロ75−82。古い竿ですが長年使っているので僕の右手になっています(笑。ただこの竿は塗装が良くなく、しょっちゅう竿をたたんだり伸ばしたりするこの釣りでは傷が多く付いて、口が裂けてきてしまいます。2004年にT氏がDaiwaからこの釣り専用の竿を出した。まだそれほど使っていない竿ですが、柔軟にして剛とはまさにこの竿だと思います。2011年に41cmのヤマメを釣りましたが、竿がギュンギュン魚を寄せてくれる感じが伝わってきて、これまた銘竿だと感心しました。

 糸は通しで使います。普通はナイロンの1.5号を使用します。長さは3ヒロが基本です。素材はナイロンが一番と思っています。伸びがあるので切れないというのがその理由です。フロロカーボンは硬すぎて良くないです。僕が好きなのはスタークUでしたが、今はスタークU2になってしまって、硬くなったのでこの釣りにはとても不都合な糸になりました。その後はもっぱらグンターを使っています。特に最近はソラロームという糸を使っています。リールに巻く長糸ですが、安価なことと劣化(ナイロンは劣化するのが問題)が極めて少ない糸だと思うからです。竿先に結ぶのにはチチワを二つ作ってリリアンに二巻きしてつなぎます。チチワはスパイダーヒッチで作るのが一番強く、手軽で良いのではないかと思います。

 ナマリはその場その場で底が取れる大きさを使います。僕の場合はナツメの3号(中通し)が基本です。中通しなのでストッパーとしてカミツブシの小さいのを付けます。正直言いまして、ナマリの大きさはいい加減です。15号まで使ったことがありますが何も問題はありません。

 鈎はいつ来るか分からない大物に備えて伊勢尼の11号が主体です。これだけの鈎ですから強度は何にも問題なく、安いのも魅力です。最近ではムツの13号くらいも使い出しました。僕の釣り方だと飲まれることが多いので、ネムリ鈎にすることによってこの確率が減るのです。リリースすることがほとんどになった僕にはピッタリの鈎だと思っています。

 目印は矢羽でも何でも良いです。見やすいのが一番。最近多く使われる毛糸目印も良いですが、ナマリが大きいので投げる必要がないので、何もそれを使う必要も感じません。仕掛けを組んだ後でも脱着可能は紙製(?)の矢羽目印が好きです。

餌はミミズしか使いません。いつでもどこでも手に入るのが魅力です。遊びで他の餌を使うこともありますが、何故か他の餌だと魚が小さいし・・・慣れていない所為もあるのかもしれないです。ミミズは売っているのも良いのですが、シマミミズの場合は天然の掘りたてのムチムチした大きな奴が良いです。ただ、濡れた場所のミミズは弱りが早いので、なるべくビショビショしていないところのミミズを採って来るようにしましょう。ドバミミズがあれば最高です。このミミズは水分に弱いので、ちょっと湿った枯葉だけで充分です。水分が多いと死んで融けてしまいます。20cmほどのドバミミズをチョン掛けにして使います。


釣り方

 まず、流す釣りではないので、魚の付き場をしっかりと把握する必要があります。少々違っていても魚を引き出して来れるようになれば何にも問題はありません。狙った場所に投げ込んで、ナマリで底を確認しながら釣ります。魚信は手で取ります。そして魚信があってもすぐには上げません。点の釣りでは魚は咥えた鈎を放さないので充分に食い込ませてから合わせます・・・これが基本です。特に相手が大物の時にはしっかり飲み込ませて、胃に掛けてしまえばあまり暴れません。よって捕りやすくなるはずです。

以上、これが僕の釣り方の基本です。良くこの釣り方は淵を釣るのに有効だとか、イワナに有効だとか言われますが、確かにその通りでもあります。しかし、実際にやっている僕にとってはこの釣りは瀬でこそ有効な釣りです。ヤマメでもイワナでも同じで、分ける必要はありません。よって混棲域でここはイワナ、ここはヤマメだと推測はしますが、釣り方には何の違いもありません。

 以上、ざっとサワリだけを書きましたが、詳細は会員専用ページの『渓流』のところに掲載しました。まだまだこの釣りを熟知したとは言い切れませんが、普通の釣りとは全く異なった釣りですので掲載してみました。