イワナ、ヤマメ、アマゴについて

・イワナ
下記の魚の総称です。
 イワナは背中に白点が散在し、胸ビレ、腹ビレ、尻ビレの縁が白く彩られているのでヤマメ・アマゴとは簡単に区別できます。パーマーク※1は下記のヤマメ・アマごほど明白ではありません。
 体高がヤマメ・アマゴよりも低いので細長い感じがします。
 ヤマメ・アマゴよりも大型になります。

アメマス(エゾイワナ)
 アマメスは海に行って帰って来た魚ですが、海に行かずに川にと留まって一生を川で過ごすアメマスをエゾイワナと言います。要はエゾイワナはアメマスの赤ちゃんなのです。海に行かずに最後まで淡水で過ごしたエゾイワナは赤ちゃんなのに年寄りという、なんとも不思議な魚です。
 体にある白点の内最大の物が瞳孔の大きさを超えているとアメマスなのだそうです。どうして海に下ると白点が瞳孔を超えるのか?・・・理屈は解りません。

オショロコマ
 英名はドリーバーデン(Dolly Varden )。日本では北海道のみに生息。体側に朱点と言うよりはピンク色の斑点がある。ブルックトラウトに似てますが、背びれの柄がオショロコマは白斑的であるのに対してブルックトラウトはムラムラした柄になっている。

ミヤベイワナ
 約1万5千年前に大雪山系の火山噴火により現在の然別湖が生まれた時に、川と海を往復していたオショロコマが湖に残留し、湖沼内で独自の進化を遂げた魚です。オショロコマの日本固有亜種です。要はオショロコマの湖を海に見立てて下るタイプだと思っていいと思います。
  オショロコマとの違いは、尾びれ・胸びれが大きいことと、鰓耙(さいは)の数がオショロコマの21から22に対し、ミヤベイワナは26と多いことだそうです。鰓耙は解剖しなきゃわからないので、見た目的には尾びれ・胸びれが大きいこと
だって・・・何と比較するのか?然別湖で釣れたオショロコマはミヤベイワナってことでいいと思います。

ブルックトラウト
 「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律で「要注意外来生物」に指定されている魚です。
 1902年(明治35年)に日光湯の湖に放流されたのが発端。現在ではその他湯川、上高地明神池、梓川、摩周湖周辺の河川などで天然繁殖が確認されている。
 オショロコマに似るが、背中の斑紋で区別することが出来る。

ニッコウイワナ
イワナの日本固有亜種。背部および体側にははっきりした白斑が存在し、側面から腹部にかけては橙色-薄桃色の斑紋も散在します。本流のような広大な場所に棲息するものは腹部が白ですが、沢などの狭い場所に棲息するものは橙色〜赤色を呈します。

ヤマトイワナ
こちらもイワナの日本固有亜種。背部および体側の白斑ははっきりしませんが、側面から腹部にかけての橙色-薄桃色の斑紋はニッコウイワナと同じです。

キリクチ
紀伊半島の十津川水系(奈良県)にのみ分布しているが、ヤマトイワナの地域変異型として考える場合が一般的になっている。この個体群が、イワナ類の南限とされています。IUCN レッドリストでは、キリクチを英名Kirikuchi char、学名 Salvelinus japonicus として、他のイワナとは別種として取り扱い、単独で絶滅危惧種に指定しています。また、環境省の絶滅のおそれのある地域個体群と1962年には奈良県の天然記念物に指定しています。
 キリクチの特徴としては、上唇先端が鼻の穴付近から急に曲がっていること。上顎が下顎に覆いかぶさるように見えること。瞳孔が大きくその周辺が黒ずんでいること。また尾びれの付け根が明るい色相を呈していること。側線部が全体として暗紅色を呈する個体が多いこともヤマトイワナと異なる所です。


ゴギ
中国地方のみに生息するイワナの日本固有亜種。ニッコウイワナによく似ていますが、背部および体側の白斑が頭部にまでも続いているのが特徴です。



・ヤマメとアマゴ
 ヤマメ・アマゴは背中に黒点が散在していますのでイワナとの区別は簡単です。区別が難しいのはヤマメとアマゴです。この二種に共通する特徴は、背中に黒点が散在し、体側には明瞭なパーマーク
※1があることです。さらに朱点が加えられた魚をアマゴと呼んで、別種として分類されていました。そしてこの二種は相模川に注ぐ酒匂川を境にして、西がアマゴ、東がヤマメとその生息域がしっかり別れていました。ところが漁協の無秩序な放流によってアマゴがヤマメ域にもばらまかれ、現在では日本全国でアマゴが確認されています。そしてヤマメとアマゴが交配してその中間的な魚(朱点が側線上だけにあったり、ほとんど黒点なのですが、薄い朱点がいくつかあったり)が出現したりしてその区別が曖昧になって来ました。ですから、現在ではヤマメとアマゴは同種で、アマゴはヤマメの亜種と分類されています。このような分類に変更されるきっかけとなったのは無班タイプのヤマメ・アマゴの出現でした。無班タイプは柄がありません。上記したようにヤマメとアマゴは朱点の有無で分類してきたのですから、柄がないので分類が出来なくなってしまったのです。僕も今までにヤマメ域で20匹程度のヤマメの無班タイプを釣りましたが、場所を言わなければこれがアマゴの無班型なのかヤマメの無班型なのか?はまったく解らないでしょう。そこで科学は遺伝子にメスを入れました。その結果、この二種は同種であることが確定されました。

 そもそもイワナの正式な標準和名は『アメマス』で、その河川残留型
※2がイワナです。同様にヤマメは『サクラマス』が正式な標準和名でその河川残留型がヤマメで、アマゴは正式標準和名が『サツキマス』。で、アマゴはその河川残留型です。サクラマスとサツキマスは現在は学術上同種になりましたが(上記参照)。こうして呼び分けているのはそれまで別種と思われていた名残です。


※1  『パーマーク』とは

サケ・マス類の幼魚の体側に現れる小判型の柄です。これを『パールマーク』という人が見受けられます。この魚の美しさと丸っこい形から真珠が想像されるのかもしれません。しかし、パールマークではなくパーマークです。『パー』とは『Parr』で未成熟を意味する単語です。ですから幼魚班などとも呼ばれます。例えばヤマメはサクラマスの河川残留型です。成魚となったサクラマスにはこのパーマークはありません。我々モンゴル系人種は、子供の頃お尻に青いアザのようなものがあります。あれと同じ物だと思ってもらって結構だと思います。


※2  『河川残留型』とは

 サケは川に産卵し、孵化するとまもなく海に下ります。このように海に行く魚を『降海型の魚』と言います。この種類の魚において、サケは全員海に行きますが、イワナやヤマメ・アマゴでは一部が川に残ります。この海に下らなかった魚たちを河川残留型とか陸封型と呼んでいます。魚が陸に残るわけではないので、ここでは陸封型という言葉ではなく河川残留型という語を使わせていただきます。細かい事ですが、表現は正しくないと思わぬことが起こりますので。