てんから竿のグリップの改造

 “てんから”という釣りの特徴は色々ありますが、究極のところは“毛鉤を上下に動かせる”というところだと思います。そのためには糸が立つ事が最低必要条件で、それを満たすためには竿にある程度の長さがあることが必須になります。
 ここのところ、天野勝利氏のてんからを見せていただいているのですが、彼が使っている竿は彼自身がプロデュースした『舞』です。しかし、ノーマルではありません。オリジナルの桐製のグリップを付けて長くしています。彼のラインは概ね7mですのでやはり少しでも竿の長さを稼ぐことを考えてのことと理解しています。
 そこで、僕も同様に僕の『舞』のグリップを長くする事を決意しました。

 とはいうものの、この竿はすでにメーカーでも販売を終えている竿ですので新品はもう手に入らない状況です。もしも失敗したら二度と使えなくなってしまうので失敗は許されません。他の竿にしてもいいのですが、この竿はどういう訳だか魚が出るのです。ちなみに調子は極軟調で、尺など掛けようものなら七転八倒してしまいます。しかし、やはり魚の出がいいというのは魅力的です。使えなくしてしまいたくはありません。

 まずはグリップに使う桐材を探しました。概ね80pで直径3pほどの円柱の桐材。それのセンターに12mm程度の穴が開いている事。出来たら貫通していてくれれば後々の竿のメンテナンスにも役立つのでいいのですが、そんな桐材は見当たりませんでした。Netで調べても、そもそもこのような桐材はせいぜい30p程度のものが売られているだけで80pなどというのは皆無でした。勿論穴が開いていない、いわゆるただの円柱の棒状の桐材なら長いものもあります。しかし、そのセンターに穴を開ける技術は僕にありません。そこで、何軒かの棒状桐材を売っているお店に電話して「センターに穴を開けてもらえないか?」と尋ねたのですが、その応えはみんな『No』でした。
 あるとき、そんなことを天野氏にお話したらなんと穴開きの桐材を送って来てくれました。しかも長短の二本も。


天野氏が送ってくれた桐材。すでに穴が開けられています。

とても嬉しかったです。早速これを取り付けようと思ったのですが、長い方でもちょっと短いのです。そこでこの桐材にブランクを通すのではなく。この桐材に竿尻にある雌ネジに合う雄ネジを取り付けて延長させることを考えました。

     

こうしておけば、もし延長部分の桐材が綺麗に付かなくても(僕の技術ではその可能性が高いのです)、最悪元の竿は弄っていないのですから、元からあった竿の尻栓をすれば元に戻せるわけです。
 桐材の穴にアルミ製のパイプを突っ込んで樹脂で固定し、そのアルミパイプにこれまた樹脂で雄ネジを作りました。


あまり格好良くありませんが、これでより糸が立つようになるはずです。

このままで充分使える改造でした。糸がより立つようになったので、釣り方もいままで出来なかった方法を取り入れることが出来ました。当然釣果アップも体感できました。そしていい気分で使っていたのですが、あるとき釣り方を変えた所為か?山梨の渓で大物を掛けてしまいました。尺チョイだと思うのですが、その時にこのジョイント部分が割れてしまったのです。尻栓を取り付けていた雌ネジの長さが2pくらいしかコルクに入っていなかったためにコルクが割れてしまったのです。下の画像のような感じで壊れました。


    

本来、ここはそんなに力が掛かる場所ではないのですから2cmも入っていれば充分なのです。しかし、こうして(延長して)ここにすべての力が掛かるような改造をしたら持つはずはありません。
 ここで困った問題が起こりました。実はこの2週間後に天野さんの所に行く予定になっていたのです。まさか彼の所に行って他のてんから竿を使うわけにはいきません。なんとかせねば・・。
もう尻栓のネジは利用できないので桐のグリップに直接差し込むしかありません。今回使ったグリップはすでにアルミパイプを中に差し込んで接着してしまったので使い物になりません。新たに桐材の棒を購入しました。勿論穴は開いていませんので自分で開けなくてはなりません。購入したのは失敗も考えて3p径

まずはノーマルのコルクのグリップをカッターで切り刻んで除去します。


もう後戻りは出来ません。

コルクを外したあと、グリップと竿の込みに嵌っている金具(ごめんなさい、名前が判りません。これからは『口栓』と呼ばせて頂きます)は竿に接着剤で付いているようなので、竿の元側から糸を購入したときに巻いてあったボビンを通してカツカツやったら、案外簡単に外れてくれました。


これは外さなくてもいいかも??

いよいよ桐材の加工に入ります。最初がいきなり山場で、どうやってきちんとセンターに穴を開けるか?です。前述した通り、業者さんも手を焼く難題なのです。
色々と考えてこんなものを作りました。

  
ドリル刃は径12mmで長さ27cmを使用。

作業台にドリルを動かないようにしっかり固定し、桐材がセンターが合う高さになるように板を敷き、その板に桐材が動かないレールみたいな物を取り付けておきます。これでドリルを回して桐材を押し滑らせて行けば真っ直ぐに穴が開けられるのではないか?と考えたのです。そしてやってみたのですが・・・難しい。まず、桐材がやはり動いてしまうのです。しかもその桐材を押し滑らせることを想定していたのですが、ドリル刃が桐材に入り込んだ瞬間、一気に引き込まれて行ってしまいます。推し進めるどころか引っ張っていないと。。。加えて桐材の部分によって固い所と柔らかい所があるみたいで、どうしても柔らかい方にドリル刃が行きたがってしまいます。ですから結局桐材が暴れてしまってセンターに穴を開けるなんて夢の又夢。


失敗。

しかし、これで何とかしないと二週間後の天野氏との釣りに使えなくなってしまいます。一発で決めなくても何発かでそこそこの穴が開けばいいのですから、ダメだった場合はどの辺までドリル刃が行ったか開いた穴に棒を突っ込んで測り、そこまでは切ってまた新たに穴開けを。結局3回目でそこそこの穴が開けられました。グリップをしっかり保持して少しづつ削るようにちょっと削っては放し、またちょっと削っては放しを繰り返したら案外いい具合の穴が開きました。
 ところで、てんから釣行の最中に移動する時、皆様はどのようにしていますか?糸が竿より随分長いですからちょっとくらいなら振ったまま移動してしまいますが、ちょっと長い距離を歩く場合、そしてそこが葦の原だったりした場合、どこかに鈎くらいは固定しないと大変です。僕は竿のグリップにあるコルクに毛鉤を刺して糸を竿に畳むようにして持って移動します。桐材にこんなことをしたら、コルクより硬いので鈎先をいためてしまう可能性があります。“まぁ、急ぎだから今はいいか・・・”と思ったのですが、コルクのシートを持っていた事を思い出して、出してきたらなんと竿のジョイントにある金属(?)にピッタリの厚さ5mm。


なんとピッタリ!

これをグリップの先に取り付ければこの問題もクリアされます。フと考えれば5mmピッタリなんで何の意味もないですね。このコルクを2枚重ねで、要はグリップの先1cmがこのコルクになります。こうしておけば後々安心です。これに同じドリル刃で穴を開けてブランクに刺したままグリップの方に接着しました。接着剤は硬くならない、硬化してもゴム質タイプの物を使いました。5mmの厚みがあれば、そこまで鈎先が届く事はないと思うのですが、一応念のために。貼り付けたコルクは四角形ですので、適当にカッターで切って、その後サンドペーパーで滑らかにしました。差し込んでみるとカタカタしてます。接着していないのですから当然です。そもそも後々のメンテナンスのことを考えると接着は出来ません。でも、並継の竿のことを考えてもらえば解ると思うのですが、ある程度合っていれば抜ける事はないのです。ブランクの桐材に入る部分にビニールテープを二段に巻き、ビニールテープの巻き数を変えてカタカタを止めました。ギュッと入るくらいにビニールテープで調整しました。


中はユルユルですので隙間だらけです。

やっと仕上がり。

 
なんか上手くいっちゃいました。

これでとりあえず今度の岐阜行きに間に合いました。

このまましばらく使っていましたが、やはり少々重いです。てんからは一日中竿を振っていますので軽い方が良いに決まっているのです。しかし、一旦これを使ってしまうと短い竿はもう考えられません。
 天野さんの所に行くまでに2回の試釣でした。残念なことに今回は天野さんの知り合いに不幸があって、その手伝いで僕らのレクチャーにお付き合いしていただけませんでした。しかし、この竿を見て『重そうやなぁ・・・』と。加えて『少し削ったらいいやン。』と。僕もそう思ったのですが、今回は時間がなかったのです。
 その後もこのまま使っていました。重いと言っても一日なんとか振り続けられていたからです。が、あるときサシモノが入る川で釣っていた時、バカデカいサシモノをスレで掛けてしまって・・・スレとは気付かなかったので一生懸命やっちゃいました。結局鱗付きの毛鉤が上がって来てスレが判明したのですが、その時に竿のグリップとブランクの隙間が大きくなってしまったらしく、カタカタしてしまいました。またいじる必要が出てしまったので、この際少し削って少しでも釣りが楽になるようにしようと考えました。

 問題はどうやってこのグリップを回すか?です。回して削らないと断面図が正円になりません。グリップが扁平すると釣っていて気持ち悪くて仕方ありません。そこで、まずグリップの一番下にネジを打ち込み、そのネジをドリルのチャックで咥えて回すことを考えました。早速やってみたのですが、桐材は思ったよりも柔らかくて一瞬でネジをねじ込んだ桐材が舐められて空回り。桐材はまったく削れないままでした。なんとか回してヤスリを当てられれば削れるのですが。。。
 大きなチャックを購入してやればいいだけの事なのかもしれませんが、3pの物を咥えられるドリルチャックってあるのでしょうか?・・・僕は知りません。もしあったとしてもそれは高価でしょうし、面白くありません。そこで、下記のようなものを作る事を考えました。
 まずは3pのグリップが入るくらいの内径を持った塩ビ菅を用意します。今回は丁度持っていたL字の塩ビ菅が丁度良さそうなのでそれを使いました。


ブカブカでも入ればいいです。

でもL時では回転時にブレブレになってしまうでしょうから切断しました。


切断面は綺麗な方がいいですが、とりあえず・・・。

これに三方向からネジが打てるようにします。


3方向からネジで止めれば桐材でも大丈夫でしょう。
※後にネジがこれではダメなことが判明したので変更してます。

これを回せばいいのですが、回すためにはドリルに付ける必要があります。そこでこの一方の面をアクリル板で閉じて、そのセンターにネジを打ち込んでそれをドリルの先で挟む事を考えました。
 まずはアクリル板を適当に切って貼り付けました。


塩ビ菅の切り口・・・キッタネェ。。。でも問題なし?

接着にどんな接着剤がいいのか?判らなかったので、とりあえず手元にあった塩ビ用の接着剤を使いました。まずはこのまま接着しました。が、良くみると接着剤が付いている所と付いていない所があります。接着剤がはみ出るのが嫌で少なめに使ったのと、切断面が綺麗でなかったのが失敗の元でした。反対側は元からの面で僕が切断したのではない面ですから、そちら面を接着すればこんなことにはなりませんでした。いずれにしても、このまま回したら外れてしまいそうです。仕方がないのでここもネジ止めして強度を出すしかありません。小さなネジを打ち込んで補強し、そのアクリル板のセンター(取り付け位置はネジで調節するので目算)に棒のようなネジ(何かに使われていたものをたまたま持っていた)を取り付けてこんなのを作りました。

     
ここに桐材のグリップを突っ込んで三方からネジで固定。ネジの回転でセンターを決めるって心算です。

ネジは当初の物ではありません。ネジの頭の下までねじ切ってあると、回転させるグリップの位置を動かせない事が判明したからです。ネジの頭の下の部分にネジが切られていない物(塩ビの厚みの分だけ)にすることにより、3方からこのネジを回したり緩めたりすることで微調整が効くようになります。これを下の写真のように使って回転させます。


すでに途中まで削った写真です。

削りたい物(グリップ)がぶれないように左手に軍手を付けて保持。そして削りたい所にサンドペーパーを当てます。サンドペーパーの使った番手は60番と120番です。保持する軍手が結構熱くなりますので、厚くなったら一休みして少し離れて削るべき所を再確認しながら徐々に作業を進めて行きます。そして終わったら上記の道具のネジを緩めてグリップを抜きます。当然ネジを差し込んだ穴が3ヶ所開いています。


そのままでも、埋めてもいいのですが・・・。

ここは切り取りました。


ちょっともったいない気もしましたが、切り取りました。

勿論そのままでもいいですし、“とのこ”などを突っ込んで平らにしてもいいのかもしれませんが、チョクチョク水に濡らす場所なのでとのこくらいでは融けてしまうと思ったからです。約15mm短くなりますが仕方ありません。ここは僕が一番手に当てる場所ですのでこのままでは角で手が痛くなってしまいます。この後はもうドリルでは回せないので手作業です。概ねカッターで角を落とし、手でクルクル回しながら丸めて行きます。

    
もうちょっと削った方が良かった。

やっと仕上がりました。一段目の太い所はブランクの一番元がある場所なので先と共に一番力が掛かります。よってあまり細くしたくありませんでしが。先も細くしたくないのですが“振る”という状況を考えると、ここが重いと削った意味があまり体感できないと思えたので敢えて削っちゃいました。ダメだったらまた作るしかありません。そんなことがあっても、もう作業用の道具類はありますのでこれほど苦労することはないと思います。一番手の甲に当る一番下の部分ももう少し削った方がいいのかもしれませんが、このくらいが僕の手の甲にフィットします。でも、今後必要を感じたらここも追加で削ろうと思っています。ここはどうせ手作業ですから。

その変化は、最初は120.7gでした。

   
削る前の重さです。

削った後は・・・


90.6g。30.01gを削り取ったわけです。これで釣りがどのくらい楽になるのか?早く行って検証したみたくなりました。

で、早速行って一日を過ごしました。
結論から言うと・・・『あまり変わらない。』です。
こんなに頑張ったのに。