大磯砂(砂利)の酸処理

大磯砂は昔からアクアリウムの底砂や濾過槽の濾材として用いられて来ました。
僕も古い人間ですから、底砂と言えばこれしか頭にありませんでした。

事の発端は自宅の水槽(1800×600×600)が老朽化して来てしまったことにあります。この水槽にはエーハイム2260という外部濾過二個で可動しています。静粛性を謳っているこの外部濾過ですが、新品のうちはいいのですが、時間が経つとインペラーの軸が磨り減ってくるのか?音が気になるようになります。そこで、この外部濾過は壁に穴を開けて外のベランダに設置してあります。そのホースが外気にさらされ紫外線にさらされたため劣化し、いつ水漏れが発生してもおかしくないような見てくれになってしまったのです。


左(エーハ○ムの純正)も元は右のような色をしてました。

こんな事になってしまったのには訳があります。正直申しまして触りたくなかったのです。この水槽は常にいい状態をキープしており、何も手が掛からない水槽なのです。設置してから20年余り経ちますが、一度も濾過槽の掃除せず、ただ蒸発した分の水を足してコケが出たらそれを掃除するくらい。それでも僕が持っている3個の水槽の中でいつもトップの状態を維持しています。水の色はウィスキーみたいな色になってしまっていますが、それでも魚たちはすこぶる元気で長生きです。しかし、上記のようにとうとう一旦止める必要性が出てしまいました。
 最初はただホースだけの交換と思っていたのですが、水を抜いてコケ対策してたら水槽の上面に二つ設置された補強(ピラー? 橋がけになってるもの)が折れていることが判明。これはマズイ状況です。もしもう一本の方まで折れたら、場合によっては一気に破壊します。すると600kgを超える水が一気に飛び出して来ます。僕はいつもこの水槽の前に座っていますので、そんな事が起こったらまず耐えられないでしょう。大怪我で済めばいいですが、場合によっては最悪の結果となる可能性だってあります。そこでまずはここを修理することにしました。まず水を全部抜いて魚は桶に入れて、外した外部濾過で水を回しておきました。空になった水槽の手前と奥側に引っ掛けを作ってロープで引っ張って水槽の膨らみをなくし(橋掛けの折れた所がピッタリになるように固定し)、裏側から幅を合わせた厚さ2mmのアクリル板をアクリル用の接着剤で貼り付けて仮固定します。接着剤が乾いたら、折れた面同士がより接着力を増すように隙間に瞬着を流し込みます。それを終えたら補強の橋(アクリル板)にドリルで穴を開け、ステンレス製のステーをネジで固定して終了。この時ネジを余り押し込むとヒビが入ってしまうのでは?と思いちょっとネットで調べました。そうしたらこのテの樹脂にネジを打ち込む場合は普通の木ネジではなく、それ専用の物があると。。。初めて知りました(恥)。樹脂用のネジは木ネジのテーパーのない奴だと思ってもらえればいいです。見た目はとても似ています。要はあまり応力が掛からないようになっているだけです。でもこれだと外れやすいので僕の場合は少々大きめな穴を開けて、接着剤を流し込んで、そこにネジを打ち込んで固定しました。

で、やっとホースの交換に取り掛かれるようになりました。外したホースは折れ曲がって流れが悪くなっている所があったので今回は塩ビ菅で配管し、壁に空いた穴に丁度入るようにしました。問題は、その穴が水槽の裏側にあるので、接着剤で固定してしまうと配管した塩ビ菅を壊さない限りは外れなくなってしまうのです。しかもそれを壊すのには長い柄の鋸が必要になります。そんなのは売っていないと思うので、もしその時が来たら長い柄の鋸から作らなければなりません。でも、接着しないともし水漏れが発生した時にはまた水槽の水を全部抜いて組み直す必要があります。どちらを採るか迷いましたが、結局前者を採りました。塩ビ菅で配管したらまず壊れることはないので、もし壊れた時には仕方ないと思いました。

で、やっと配管も終わって接着剤を乾かすために1日そのまま放置して・・・翌日水を張って一個の濾過槽を接続して水を回し出しました。上記したように20年間ほぼ放りっぱなしの水槽ですから、この際ちゃんと綺麗にしようと考えました。
 愛用の除草剤『ラウンドアップマックスロード』を希釈して水槽の隅々まで霧吹きで吹き付けました。この除草剤は魚には有害なのでこんな時しか使えませんが、その効果は素晴らしいものがあります。


ラウンドアップマックスロード

何故かと言うと、この除草剤は葉から入って根を枯らすからです。一旦やればしばらく生えてきません。希釈は少々濃い目の3倍希釈。それを吹き付けたら1時間以上置くのですが、今回は完璧を期して1日おいてやりました。そしてその後三回水を張って捨ててを繰り返し、ラウンドアップマックスロードを抜きます。そしていよいよ魚を入れるために水を作ります。水を満杯に入れて規定量のカルキ抜きを入れて濾過槽を接続して回します。濾過槽は一つだけ掃除しました。状態は皆様の想像された通りです。20年も掃除していないのですから。そしてもう一個はそのままいじっていません。今までいい状態で来たのですからこのバクテリアが再び水槽を維持してくれることを願ったからです。もしやってダメだったら仕方がないので掃除しようと考えました。

 そして魚(タイリクバラタナゴ)を一匹入れてみました。パイロットフィッシュです。そして二日間。実にいい感じです。そこで総ての魚を戻しました。
 久し振りに広い空間に戻れた魚たち。最初はおどおどしていましたがすぐに落ち着いて以前のように泳ぎ出しました。今回はエアポンプは使わず、エアレーションは濾過の吐き出し口を水面から離して空気を混ぜ込む方法をとったので少々音がします。まぁそれはいいのですが、以前にはあまりなかった“流れ”ができてしまいました。基本的にあまり流れを好まないタイリクバラタナゴですので出来るだけこの流れを消して上げることを考えました。以前よりこの水槽には底砂を入れていませんでした。メンテが楽だと考えたのです(実際にはメンテはありませんでしたが)。でも、この“流れ”を消すのには底砂が水流の抵抗になってくれるのでいいのではないかと思い、今回は底砂を入れてみることにしました。そして底砂を入れるのであれば、行く行くはCo2を添加して水草も・・・なんて考えてしまいました。


で、やっと酸処理の話になります。
 酸処理って何?・・・正直僕はそこまですることはないと思っていました。以前、冷水魚(ヤマメ・イワナなどの渓魚)を飼育していた時、その濾過(オーバーフロー式)に大磯砂利を使っていました。当然その頃は酸処理なんて知識はなかったのでいきなり濾過槽に放り込みました。ご存知のようにオーバーフロー式の濾過槽の大きさは自由です。基本的に大食漢の渓魚を飼うのにはそれなりに大きな濾過槽が必要となります。というより、だからオーバーフロー式を選び、大き目の濾過槽にして飼育していました。ですからそれなりに大量の大磯砂を酸処理なしにいきなり使いだしたのですが、何も問題はありませんでした。そのまま20年ほど使いましたが、この砂利が問題を起こしたことは一度もありませんでしたので、僕の中で大磯砂は底砂利にも濾材にも使える万能&素晴らしい素材なのです。ですから、今回も他の物を使う気にはなれませんでした。で、購入を考えてネット検索してみました。概ねの値段を知りたかったのと、過去に園芸用の大磯砂を購入したら粒が尖っていて使い辛かった経験があったからです。そしてみつけた単語が“酸処理”でした。・・・何だろう?と思って調べてみたら、昔の大磯砂は大磯という場所で採取していたのですが、現在は外国で似通ったものを大磯砂として売っているらしいのです。その外国の大磯砂は貝殻などの、水槽の水をアルカリ性にしてしまうため、弱酸性を好む魚や水草に使うのは良くないのだそうです。ですから事前にアルカリ性に傾かないようにしてしまおうというのが酸処理なのだそうです。上記したように僕が以前使っていた時はそんな処理はしませんでしたので、酸処理をしようかしまいか?迷ったのですが、魚を苦しめてしまうような飼い方はしたくないので酸処理にチャレンジしてみることにしました。勿論、酸処理済みを謳っている製品もあるのですが、そういう大磯砂は想像以上に高価でビックリ。一度チャレンジしてみるのもいいかも・・・と思った次第です。
 とはいうものの、今回の水槽に水草が植えられるくらい大磯砂を引くのには概ね150Kgが必要です。まったくの未経験の僕がこれだけの量をちゃんと処理できるのか?の不安がつのりました。でも、それでも酸処理済みの大磯砂を買ったら10万超え。自分で酸処理したら道具を買いそろえても5万円以下です。このあまりにも大きな差を考えるとやはり自分でやるしかないと思いました。

 酸処理とは・・・大磯砂は様々な粒の集合でできています。その中に水槽の水をアルカリ性に導いてしまう粒があるのです(貝殻など)。そういうアルカリ性に導く粒を前もって酸に漬けて融かして除去してしまおうという処理です。
 僕自身、こんな事をするのは初めてなので上手く行くかどうか?不安材料で一杯です。それでも、とにかく材料を集めました。
1.大磯砂
   砂って呼ばれていますが、実際は砂利と言った方が的確かもしれません。ネットで調べて2〜5mmくらいの1分という小粒を選びました。どのくらいの大きさが良いのか?は判らないのですが、最終的に水草を植えようと思っていますのであまり大きいと根が張り辛いのではないかと思えたのでこの大きさにしました。量は140kg。この量は概ね1800×600で5〜10p程度になるように色々なWebで書かれている数値を参考にして計算した結果、150Kg程度と思われましたが20Kg包装なので7袋を購入しました。


砂利は宅配便が便利。重いですから。

2.クエン酸
   酸処理って言うくらいですから酸が必要です。食酢、木酢酸、塩酸なども使われます。要はなんでもある程度の強さの酸であればいいのです。しかし僕がクエン酸を選んだ理由はただ臭くないということ。加えて安くて管理が楽な事です。ヒャッキンで100g包装で売られています(一部のヒャッキンでは200gで100円もあるようです)。どのクエン酸が良いのかは判りませんが、僕は他の用でホームセンターに行った時に目に付いたのでそれを購入して来ました。概ね大磯砂一袋に対して一袋を目安に購入しました。(実はこんなに要らなかった)



どこのメーカーでもあまり変わらないと思います。

3.PH測定器
   いろいろなWebで酸処理の仕方を見ていると必須に思えたので購入しました。しかしながら正確に測れるものは酸処理した大磯砂が買えてしまうほど高価です。酸処理も完璧を狙えばそういう正確に測れる物が必要になるとは思いますが、そこまでの完璧は狙っていないので安い物を購入しました。結論から言うとこれで充分、ってか、後になってみればPH測定器は絶対必要というものではないように思えます。少なくとも下の測定器はこの処理には不向きです。KKmoon 水質テスター PH/ CL2塩素テスターは基本的にプールやスパ用のようです。


KKmoon 水質テスター PH/ CL2塩素テスター

4.容器
   酸処理をする容器です。耐酸性があればどんな容器でもいいです。60p水槽程度の量であればバケツで充分だと思いますが、上記のように大量に処理するとなるとバケツでは時間が掛かり過ぎます。で、後半は家にあったタライ(?)みたいな桶を使うことになりました。

5.手袋
   クエン酸でかなり強い酸性溶液を作るので、酸に皮膚をやられてしまう危険性があります。僕の場合、ツラの皮と手の皮は厚いので大丈夫ですが、手が荒れやすい人は使った方が良いと思います。



さていよいよ酸処理の手技です。

まずは基本的なやり方です。

1.いろいろなWebを参考にすると、まず軽く水洗し、その際大きな貝殻などがあった場合は取り除くとあります。要は大きなアルカリ要因はクエン酸の無駄使いになるので前もって取り除きましょうということです。ならば水洗する前にできるだけそれらしい粒は除いてしまった方がいいに決まっています。ってことで、黒のゴミ袋を広げて(アルカリ性にする粒は白系の色であることが多いので)、そこに少量づつ砂利を広げて“らしい”“かもしれない”粒をピンセットで除いて行きました。かなりの根気が要る作業ですが、これからずっと使う物ですから最初をしっかりしておかないと。後でやり直しなんてことになったら目も当てられませんから。

2.ということで、僕の場合は2番目が水洗です。最初は濁り水が出ます。アクみたいな物も泡と一緒に出てきます。本来ならばそれが完全に出なくなるまで洗えば良いのでしょうが、量が量なのでそんな丁寧な事はやってられません。ざっと濁りが出なくなるくらいまで洗いました。

3.その砂利は3個のバケツに分けて入れました。一つはクエン酸多目(一袋の2/3を投入)。もう一つはクエン酸少な目(一袋の1/3を投入)。もう一つは何も入れないままの物。要はクエン酸の効果濃度が大雑把に知りたかったので比較対象の物が必要でした。一応参考までに最初のPH値を計ったのですが、クエン酸少な目の方でもメーターは振り切ってしまって計測不能。濃い目も当然同じでした。

4.そして効果が出たかどうかを知るためにPHを測定します。予定では徐々に酸性が弱まっているはずです。そしてその酸性への移行が止まったらアルカリ要因は撲滅されたわけですからお終いになるわけです。ところが何日経ってもメーター振り切ってしまって計測不能。一週間様子をみましたがメーターの振り切りに変化はなし。いくらなんでももう終わっているだろうということで終了。クエン酸溶液はまだ使えそうなので、ザルで砂利だけ掬って溶液はそのままにして砂利は水洗。よく水を切って天日干しに。

5.天日干しは日当たりの良い場所にブルーシートを敷いて、その上に水洗した砂利をなるべく薄く伸ばして放置するだけです。乾燥すると色が白っぽくなりますのですぐに判ります。そしてそれを再びバケツに戻します。その時、出来上がった砂利を見て妙に白くなっている粒ががるのに気が付きました。要は酸化された粒です。軽石みたいになっています。結構な大きさの物まであるので、完全に芯まで酸処理されたかどうか?が不安になりました。もっと融けてしまっているものと思っていたのです。こうなったらもう一回クエン酸溶液に漬けて完全に溶かすか、もしくはもう一度1.を繰り返すしかありません。結論的にはもう一度1.をすることにしました。その理由は
もう一度クエン酸溶液に漬けたところで完全に溶けるまでには相当な時間が掛かる。もしくは完全には融けきらないかもしれないと思えたことと、酸処理によってアルカリ要因の白さが際立ったので見つけやすくなったからです。ちなみにこの白い物はクエン酸カルシウムという物だそうです。

6.再び1.のように黒のゴミ袋を広げ、そこに酸処理を終えた砂利を少量づつ広げて“らしい”“かもしれない”粒をピンセットで除く作業です。1.よりも随分楽でした。砂利が乾いている事もあって砂利同士がくっつき合わないからつまみ出すのも楽ですし、何よりも白が際立ちますから見つけるのも楽になります。そして“らしい”“かもしれない”粒を除去しました。

7.それを水洗して終了です。このときの水洗は砂利にこびりついたクエン酸カルシウムをこそぎ落とすように圧を加えたり、早く掻き混ぜて砂利の粒同士を勢い良くぶつけるようにして水洗します。これを少量づつザルに採り、水道水で流しながらシャカシャカ掻き混ぜると小さな砂利や細かく粉砕されたクエン酸カルシウムが流れ落ちます。

8.完成ですのでそのまま水槽に入れます。


それではそれら(上記の各項)の実際です。
1.の実際
  下の写真のように机に黒のゴミ袋を敷いて、その上に砂利を撒いて“らしい”“かもしれない”粒をピンセットで除きました。


僕が苦手な地味な作業です

  採取された“らしい”“かもしれない”粒たちです。


貝殻っぽい粒


こういう透明な粒はどうなんでしょ?一応“かもしれない粒”の方に入れておきました。


石灰岩的な粒も“かもしれない粒”の方に入れておきました。


砂岩?珊瑚?これらも“かもしれない粒”の方に。

結構な時間が掛かります。140kgも購入したのですからこれも想定内です。頑張るしかありません。続けてればいつかは終わるのですから。

2.は単純すぎるので詳細は割愛させていただきます。

3.酸処理は初体験なので本当に出来るかどうか分かりません。そこで比較対象のために最初だけクエン酸を入れない物も作ってそれと比較してみようと考えました。それとクエン酸の濃さによる違いも見てみたいので目算ですが一つのバケツにはクエン酸1袋の2/3を、もう一つには1/3を投入してその差を確認しました。


ピンクが2/3、真ん中が何もしていないもの、右が1/3の物。(一日経過した状態)

酸処理が進むとその反応で泡が出てくるはずなのですがまったく確認できませんでした。そこで試しにバケツを軽く蹴飛ばしてみました。そうしたらブクブクって。


出てきてくれました。

掻き混ぜてみると


白濁しました。

この白いのはどうやらクエン酸カルシウム上手く行っているようです。
そのまま放置して酸処理をより進めてもらいます。3日目くらいに白いゴミみたいな、もしくは何かの粒が崩れたような物が出現しました。これが水槽の水をアルカリ性に導く因子のようです。それが酸処理によって化学反応(中和反応?)が起こって壊され、クエン酸カルシウムが現われた物のようです。


反応してクエン酸カルシウムが出現した様子

これを掻き混ぜると・・・


真っ白な物が表面を覆いました。

多分これがクエン酸カルシウムです。どうやら成功しているようです。このまま野暮用にかまけてそのまま放置となりました。

4.クエン酸溶液に漬けてから7日目に再びPHメーターで計測すると、やはり針が振り切ってしまって計測不能の強酸性。これ以上置いておいても変わらなそうなので砂利を取り出しました。溶液はまだ使えますので砂利だけザルで受けて溶液は次にまた使います。取り出した砂利は水道水で洗います。もの凄く白濁しますので、それが概ね納まるまで洗います。これを天日干しにします。 結局面倒をみないで1週間も放置したのでクエン酸の濃度による違いは確認できませんでしたが、翌日に見たときに高濃度溶液の方の泡の出方が多かったので、やはり濃度は高い方が短時間で処理できるように思えます。

5.天日干しと書きましたが、別に天日じゃなくてもいいです。要は砂利が乾けばいいのです。ここでどうして乾かすかと言いますと、化学反応によって形成されたクエン酸カルシウムが大小それぞれで、濡れていると小さな粒が砂利にくっついて除去し辛いからだと理解しています。


天日干し

乾燥すると砂利の色が白っぽくなるので判ります。気をつけるべきは雨。僕が干した日も途中で降ってきたのでブルーシートを折りたたんで雨が掛からないようにし、雨が通過するのを待ちました。

6.砂利が乾燥すると白さが増したクエン酸カルシウムは著しく目立ちます。


赤矢印がそれです。

反応を終えた終末形態ですからこのままでもいいのかというとやはりそうではなさそうです。大きな粒などは芯まで反応していないでしょうし。そこで、もう一度乾いた砂利を机に広げて白化したクエン酸カルシウムをピンセットで除去します。


クエン酸カルシウム

上記のように誰が見ても反応した形のものは取り除くのですが、下の写真のようにクエン酸カルシウムが砂利の粒にまとわり付いたような物もあります。


どのくらいの付着があったら取り除くのか?

この写真のようにはっきりしたものは勿論取り除くのですが、付着したクエン酸カルシウムがほんの少しだったりするとどこまでを取り除くかが問題です。もし本当に微量でも付着している粒を取り除いたら全体量が半分くらいになってしまうかもしれません。よって、クエン酸カルシウムが)うっすら付いているものは、酸処理を終えたものとしてそのまま取り除きませんでした。

7.最後にもう一度水洗します。これは上記のように微妙に砂粒に付着したクエン酸カルシウムを出来るだけ剥ぎ取るのと、細かく砕けて剥がれ落ちたクエン酸カルシウムの小さな粒を除くためです。なるべく少量をバケツにとって水洗するのですが、このときは砂利の粒と粒が勢い良く当たるよいに高速掻き混ぜをしたり、はたまた押し付けて粒同士がお互いを削るような(お米を研ぐ感じ)にしたりして、できるだけクエン酸カルシウムが付着した粒から剥がしとるようにしました。それを2〜3回繰り返します。この時のコツはバケツに入れる水の量を多くし、砂利を手で煽って、その水流でバケツの底から砂利を吹き上げるようにします。クエン酸カルシウムは砂利より少し軽いので沈降速度が遅いのです。ですから砂利とクエン酸カルシウムの粉が舞い上がって砂利だけが沈んで、クエン酸カルシウムがまだ沈まずにいる内にバケツを倒して排水します。そうすると効率よくクエン酸カルシウムが排除されます。結構超絶的タイミングが要求されますが、案外楽しいです。それを終えてクエン酸カルシウムの粉が見受けられなくなったらザルに受け、ザルがそのまま入るような少々大き目のバケツに水を張り、その中でふるって小さな粒やクエン酸カルシウムの小片をふるい落としました。


水中でふるいます。

8.これで終了ですので、そのまま水槽に入れます。


PH測定器が使い物にならないので何とかならないかと考えていました。二袋を終えたのですがまだメーター振り切りですから。で、ちょっと楽な方法を思い付きました。どうせPH測定が出来ないのなら思いっきり濃いクエン酸溶液を作っておいて処理してクエン酸カルシウムが出現してきたらその時点でクエン酸溶液から出して取り除けばいいわけです。要は完全に処理する必要はない。ある程度酸処理させてそれを除けばいいということです。しかも良く考えたらこの方法に1.は必要ないのです。どうせ大きい粒の芯まで酸処理はできないのですから、酸処理するというよりアルカリ性に傾ける粒をクエン酸処理によって目立たせることを目的にするのです。酸処理するとクエン酸カルシウムが出現して真っ白になって目立ちますから。そしてそれを手で取り除けば砂利の選別も一度で済みます。しかも目立つのでやりやすいはずです。1.の選別行程は省けますし、芯まで反応させる必要がないし、選別もやり易いですから時間の短縮にもなるはずです。

早速三袋目からはその方法でやってみました。効率を考えて今度はバケツではなく桶を使いました。いきなり水洗してクエン酸溶液が入った(前からの使い古しにまたクエン酸を足したもの)桶に漬け込みます。二日目にしてアルカリ要因が崩れ始め、3日後には見事に花を咲かせてくれました。


いい感じで処理が進んでいるのがお分りいただけると思います。

その後はまた元に戻って水洗して天日干し。そして“らしい”“かもしれない”粒を除去し、再び水洗して水槽に。こうする事によってかなりスピードアップする事ができました。

 ところでこの“らしい”“かもしれない”粒はどんな粒なのでしょう?僕が“らしい”“かもしれない”と思って取り除いた粒は本当に水槽の水をアルカリ性にする粒なのでしょうか?そこで、実験をしてみました。容器に集めた“らしい”“かもしれない”粒を並べてクエン酸のほぼ飽和液に入れてみました。水槽の水をアルカリ性にしてしまう粒は融けてしまうか?はたまた華が咲くか?
 まず容器(見やすいように黒い物を買ってきました)に水を張り、そこに予め分類しておいた“らしい”“かもしれない”粒を並べてみました。貝殻などは入れたその場で融け始めました。


下の段の右から二列目が明らかに貝殻と思われた粒です

下記のようにある程度の種類に分けて並べました。正しい名称ではなく、僕が見て区別しただけなので“そんな感じに見える”程度の区分けと思ってください。



(強)


(中)


(弱)


(薄茶)


(濃茶)
Ca









Ca
付着

融けるのが早い粒は泡を吹きながら移動して行ってしまいます。なんかとても可愛らしい動きです。
そして約3時間後同じ位置から再び撮影したのが下の写真です。


動き回った後が残ります

そしてほぼ24時間後がしたの写真です。


貝殻はすっかり融けてなくなってしまいました

結局このまま5日間ほど様子を見ましたが、その後の変化はありませんでした。ということはほぼ24時間で反応は終わっているということですから酸処理に要する時間は1〜2日ということです。
 ただ、ここでちょっと疑問を持ちました。2日もすれば貝殻なんかは完全になくなってしまうのですが、半融けクエン酸カルシウムはまったく見当たりません。ここでいう半融けのクエン酸カルシウムの塊とは下の写真のような物です。


クエン酸カルシウム。メリケン粉でまぶしたみたいな粒

これは本当にクエン酸カルシウムの塊なのでしょうか?僕のイメージでは貝殻のようにカルシウム100%みたいな物は完全にとけてしまうのですが、中途半端にカルシウムを含有している粒は半融け状態になって残ってしまうのだと思っていたのです。でも、今回の実験では色々な種類の粒を用意したのにこのような真っ白でまるでメリケン粉をまぶしたような粒は一つも出現しませんでした。要は解ける粒は二日もすれば完全に融け、溶けない物は全然溶けない。中途半端に溶けた物は一つもありませんでした。となると、この粒の正体は何なんでしょう?
 そこで、この粒の正体を暴こうと考えました。

 まずはこの粒はあまり硬くないので爪で割ってみました。すると何やら芯みたいなものがあります。そこで超音波洗浄機にかけてみました。専門のものではなく、オモチャみたいな、眼鏡を洗うためのものです。スイッチをいきなり表面の白い部分(多分酸化カルシウム)が粉になって飛び散りはじめました。で、3分ほどかけて取り出して見ました。それが下の写真です。


まだ少し残っていますがメリケン粉みたいなのが取れました。

これから分かるように、クエン酸カルシウムと思っていた粒は、実はクエン酸カルシウムをまわりに纏った砂利の粒だったのです。要はカルシウムがクエン酸によって溶かされそれがイオン化して他の粒にくっついてこういう形になっていたのです。
 が、良く考えるとこれもまた理解に悩むことがあります。それはどうしてクエン酸カルシウムが付く粒と付かない粒があるのか?ということと、どういう粒にクエン酸カルシウムは付きやすいのか?という点です。

 そこで再び実験をしてみました。
 実験方法は、一つの容器に沢山の貝殻やサンゴ、そして酸処理で上のようにクエン酸カルシウムをまとった粒のクエン酸カルシウムを除去したものとクエン酸カルシウムを纏わなかった粒をそれぞれ離して置いてみるという方法です。クエン酸溶液は酸処理に使ったものを使いました。はたして一旦溶解したクエン酸カルシウムが再付着しやすい粒と付き辛い粒があるのでしょうか?まずは今までの酸処理でクエン酸カルシウムを纏った粒をいくつかアトランダムに選びました。そして、それらの粒を超音波洗浄機にかけて付着したクエン酸カルシウムを落とします。


超音波洗浄器区は眼鏡の洗浄用のものを流用

超音波洗浄器にかけると下のようにある程度クエン酸カルシウムが除去できます。

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完全除去には至りませんが、だいたいは除去できます。でもそれらの粒の新鮮面が出たほうが良さそうなので、軽くサンドブラストしました。

選んだ粒は6粒です。ほぼ完全にクエン酸カルシウムに覆われているものが4個に一部覆われているものが2個です。


@一粒目

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A二粒目

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A三粒目

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C四粒目

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D五粒目

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E六粒目

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上記の粒をケースに入れ、対照群として酸処理してもクエン酸カルシウムが付着していない物を選んで同じ条件でケースに入れ、そこに酸処理に使ったクエン酸溶液を入れて浸しました。使った溶液は酸処理に使って下のようにクエン酸カルシウムが沈殿した物の上澄み液を使いました。これならばもうほぼクエン酸カルシウムは飽和状態にあるはずですから。


クエン酸カルシウムが沈殿しています。

取り出してみるとこんなに黄緑色です。


美味しそうな色です。

 ただ、もし変化が起こらないようであればカルシウム系の何かを真ん中に置けるよう、テスト粒は両端に並べました。


左列が対照群で、右列がクエン酸カルシウムが着いていた砂利です。
右側の列がクエン酸カルシウムが着いていた粒です。
粒の順番は下から上記の砂利@Aと並んでいます。
埃っぽい所に置いていたので埃が浮かんで見辛いです。ごめんなさい。

12時間が経つと


右側の粒にクエン酸カルシウムが付き始めました。

二日経つと


かなり来てますね

思ったよりもクエン酸カルシウムの付が良くなかったので真ん中に海水魚飼育で使っていたサンゴを入れてみました。


なんか、サンゴはあまり融けていないような・・・。

5日目です。


サンゴはあまり融けていないように見えますがクエン酸カルシウムは沢山付いてくれました。

この実験により、白くなった粒は表面が融けて白くなったのではなく、クエン酸溶液に溶け出したカルシウムが、ある一部の粒が集まって表面に付着する。そうする事によって粒が白くなることが解りました。また、粒によってクエン酸カルシウムを集めるものと集めないもの、また強く集めるものと集めるには集めるがそれほど強力には集めない粒があることも分かりました。

たそのまま放置して12日目です。


クエン酸カルシウムの凝集は留まることを知りません。

そして16日目。クエン酸カルシウムを集める粒は切りなく集めて凝集していきます。


こうして解った事は、水槽の水をアルカリ性に傾けるのはカルシウム。そして酸処理とはそのカルシウムを融かしてクエン酸カルシウムという中性の、要は魚や水草にとって無害な物質に変えてしまうことです。例えば貝がらの主成分は炭酸カルシュウムとタンパク質なのでそれをクエン酸で融かして水に不溶性のクエン酸カルシウムにしてしまう作業であることが解りました。クエン酸カルシウムは水に溶けないので水槽の水をアルカリ性にしてしまうこともなく、また腸の環境を整える作用もあるそうなので魚たちにとって有益な物質に変化させるわけです。特別取り除く必要はないと思いますが、水を白濁させそうなのでやはり取り除くことにします。そしてそのクエン酸カルシウムは大磯砂のある一部の種類の粒に付着して凝集します。その集める力が強い粒の周りには付着せずに近所で凝集しているだけの物も見受けられます。いずれにしてもそれらの粒はクエン酸カルシウムというクエン酸溶液に解けている物質を集める作用を持っている粒です。もしかしたらこの粒は水槽内の水に溶け出した様々な物質を凝集し、水をより純水に近付ける作用を持った素晴らしい粒なのかもしれません。現実問題としてこれらのクエン酸カルシウムを纏った粒、クエン酸カルシウムを取り除いて水槽に入れようかどうか?迷っています。
 ちなみに最終的に使い終えたクエン酸溶液は、最初はハイターを入れて中和して廃棄しようと思っていましたが、それはとても危険らしく(塩素が発生するので)、量が多いので中和せず、我が家の敷地で植物が生えてもらいたくない場所に撒きました。