タナゴを飼う

 釣った時にあれだけ美しいタナゴですからだれでも自分の近くに置いてずっと見ていたいと思うのは当然です。でも飼育するということはその魚の人生(魚生?)を奪う事です。
 もしあなたが魚だったとしたらどうでしょう?釣られるのも辛いと思いますが、その後生きるか死ぬかの瀬戸際のような生活を強いられたら・・・。ところがもしそこが今までの環境(釣り場環境)より快適に生活できる場所だったらどうでしょう。痛い思いをして釣られた事も許せてしまうかもしれません。
 釣った魚を飼育する時は是非そんな事を頭に置いておいてください。

 タナゴの婚姻色は眼を見張る綺麗さです。しかし、あれは婚姻色と言われるくらいですから産卵時期の一時の姿です。よって、婚姻色が出ていないタナゴはあのような煌びやかさはありません。まずはそれを考えた上で飼育の検討をしてください。

 タナゴに限らず総ての釣った(もしくは捕った)魚において一旦飼育をしたら死ぬまでの総てがあなたの責任です。小さな魚とはいえ一つの命です。その辺の覚悟が出来なければ飼育するべきではありません。一旦飼育したものの、想像と違っていたりすることは茶飯事です。だからといって途中放棄などは大きな自然破壊を引き起こす可能性があります。一旦水槽に入れたら絶対に死ぬまで飼育してください。繰り返しますが、総てがあなたの責任です。

 覚悟を決めて始めた飼育です。飼う以上は魚にとって最高の環境の中で生きていけるよう最大限の努力を払ってください。それがあなたの責任です。


 ではどんな飼い方が彼らにとって嬉しいのか?を考えてみたいと思います。

 
水質
 タナゴの場合、どういうわけか沢山のタナゴを一つの水槽に入れて楽しむ人が多いようです。ちなみに僕もそうです。沢山の魚を入れれば当然それなりに糞は多くなりますし、酸素量も少なくなります。そして濾過能力のキャパを超えて水質悪化は激しくなります。ですから、やたらめったら放り込んではいけません。
 ではどのくらいの数を入れたら良いのか?・・・こう書くと限界ギリギリの数、つまりは生きるか死ぬかの瀬戸際のような数についての記載になってしまうのですが、まずはそれを知らないといけません。ただ、タナゴも飼育しているうちに大きくなります。大きくなれば餌の量も増えます。酸素消費量も増えます。そういう先のことを考えて現在の飼育数が決まってくるのです。勿論、大きくなった後の限界ギリギリで飼育するのではなく、余裕を持った最終的な餌の量、酸素消費量を考えるのです。要は先を見越した時、魚の量、ろ過能力、水草の種類と量のバランスが上手く取れることを見越して一番いい状態を考えた数だけにします。
 よく“何センチの水槽だったら何匹くらいまで”などと言っている人を見かけますが、あれはおかしいです。許容数を決めるのは水槽の大きさではなく、むしろ濾過能力です。ろ過能力が大きければそれなりの数を飼育していても大丈夫です。よって濾過槽を大きくすれば沢山飼えるのです。ただ、気を付けなければならないのは、外部濾過の場合は濾過槽を大きくすると濾過細菌が消費する酸素量がも大きくなり、これといった酸素供給源がなければ全体的に酸欠の水槽になってしまいます。よって、外部濾過の場合は増やせばいいってものでもありません。よって、そのような場合はそれなりのエアレーションを設けるとかの工夫が必要になります。

 
環境
 タナゴは小さくて、自然界では決して強い魚ではありません。よって、いつもビクビクして生きています。どこかに隠れていないと安心して生活していられない魚です。よって隠れ場を作ってあげる事が必要です。それは流木や水草、はたまた石ころでも何でもいいです。よく“隠れて出て来ない”と言って隠れ場を作らない人がいますが、人間の思い通りにタナゴを動かそうとしたら可愛そうです。ゆったりとした生活を送れるように必ず隠れ場を作ってあげてください。水槽に入れた直後は新しい環境に慣れていないので隠れ場に入ったままになりますが、水槽環境に慣れてくれば必ず出てきてくれます。流木、水草、石ころと書きましたが、出来たら水草が良いです。水草は硝酸塩を吸収して水質を良くする手助けをしてくれます。流木や石ころにはそういうW効果(隠れ場と水質を良くする効果)は望めません。ただ、タナゴの中にはカネヒラのように水草が大好きな種類がいます。よって、そのような場合は水草はすぐに丸坊主にされてしまいますので無理があります。水草を餌として入れるのであれば問題ないですが、丸坊主では隠れ場としての意味はなくなってしまいます。よって、そのような魚は飼育しないことです。ただ、どうしてもカネヒラを水草と一緒に入れて飼いたいというのであれば、彼らに食べられない水草を吟味する必要があります。アヌビアス・ナナのような硬い葉っぱの水草は比較的大丈夫のようです。ただ、このテの水草は生長が遅いです。成長が遅いと言うことはそれほど水質を良くする効果は薄いと言うことです。そこでお勧めはズバリ・・・コウホネです。それほど硬い葉ではないのに、何故かコウホネは食べられません。コウホネはあちこちで自生している水草なので自分で採って来られます。ペットショップでも時々売られてもいますがとても安価です。100円か高くても500円くらいです。光量を強くすればどんどん大きくなって増えて行きますので少量で充分です。60cm水槽なら1本で充分です。


コウホネ
コケが多くなってしまったので対処したときの写真です。

1800×60×60の5/4程度の範囲に植えてます。
また一部ヒャキン皿に植えてあります。これは成長して茎根が枝分かれしたものを分けた小さい物をこうしてます。移動に便利ですし、肥料添加も無駄なく出来ます。本当はこのまま埋けちゃえばいいのですが、とにかく成長が早いのですぐに皿いっぱいになってしまいますので少し根付いたら直に植えます。水流でユラユラ揺れる黄緑はとてもいい感じです。
 話が水草の話みたいになってしまったのですが、流木や石もいいですが水草にするとより水質が良くなるのでお勧めです。尚、水草はコケ対策の道具としても大切です。
  ・コケ対策・・・・・・・・・・・・・


   ・底砂(大磯砂の酸処理)・・・・・・

 光量
 蛍光灯での話ですが、タナゴの色を楽しみたいだけであれば光量は少なくした方がいいです。光量が多いと白っぽくなってしまいます。ただ、生物が生きていくにあたって骨を作るのにどうしても光(紫外線)が必要です。ある程度の大きさがある水槽であれば一部だけに光を入れて他は暗くしてあげると魚は都合の良い方で過ごすのでリラックスできるようです。色を楽しみたいがために普段は真っ暗にしておいて、見るときだけ点灯している人もいますが、これは魚にとって良いことではないです。エゴは捨てて、純粋に魚が毎日快適に過ごせるようにしてあげましょう。

 

 タナゴは雑食性ですから餌は色々な物を上げてください。注意すべきは同じ餌だけで飼わないことです。基本的に市販されている餌はほとんどが魚肉(フィッシュミール)です。よって植物性の栄養分が不足します。時々は柔らかい水草を餌として植えたり、ほうれん草を茹でて上げたり(上の写真の右下に写っている小さな流木は茹でたほうれん草を上げる時に使います。輪ゴムが付いているでしょ。これは茹でたほうれん草の束をここに挟み込んでおくためです。)、とにかく食べる物は何でも上げてください。また時々は生の動物性の物も上げてください。僕は釣りで余った赤むしを上げたりもしますが、赤むしは皮が糞内にそのまま出てきますのでそれを嫌う人もいます。そういう人は糸ミミズを買って来て上げるとか、とにかく色々な餌を上げることが栄養バランスを整え、結果として病気にならない魚に育って行きます。
 尚、タナゴ飼育で一番厄介で案外良く出る病気にエロモナス病があります。これは古くなった餌などが原因と聞きました。獣医学的知識はないのですが、確かにそうかもしれません。よって、古くなった餌は気前良く捨てて新鮮な餌で飼育しましょう。蛇足ですが、以前僕の水槽でもエロモナス病が蔓延して困ったことがありました。原因は昔、濾過槽に入れた活性炭が放置されて網袋が破けてしまってました。それは除去したのですが、その時にかなりの活性炭が濾過槽の底に残っていて、それが腐ってきたのか?酸を出していたみたいです。様々なことをやっても改善されなかったのですが、これを除去したら一気に良くなった経験があります。

飼育していると様々なトラブルにぶつかりますが、その一つを紹介します。

 ・感電・・・・・