タイリクバラタナゴ釣り


タイリクバラタナゴのオス。(2015年8月)

 この釣りはタナゴ釣りの中で一番難しいのではないかと思います。でも数が多いタナゴですので特別狙わなくても外道で釣れて来ることが多いタナゴです。
 タイリクバラタナゴは1940年代前半(第二次世界大戦中)、蛋白源として中国からソウギョ、ハクレンなどを利根川に放流した際、これらに混じって入ってしまったと言われている外来種です。タイリクバラタナゴの問題はニッポンバラタナゴと容易に交雑してしまうことです。お陰で日本に古来からいたニッポンバラタナゴの純血種は絶滅したと言われています。タイリクバラタナゴとニッポンバラタナゴの違いは腹鰭の前端部にある白い線です。ほとんどの場合はこれでいいのですが、この白線のないタイリクバラタナゴもいますので、確定診断は遺伝子で調べるしかありません。
 このようにタイリクバラタナゴは在来種のニッポンバラタナゴを絶滅させた魚です。こういう魚は個人的には嫌いなのですが、釣りとしてはそれなりの難しさがあるのでこの釣りの詳細を書こうと思いました。
 この釣りは基本的な浮き釣りを始め、プロペラ釣りや脈釣りなど様々な釣り方がありますが、もっともポピュラーな浮き釣りについて書きます。
 タイリクバラタナゴ釣りでは“しもり釣り”とか“しもらせ釣り”などと言われるちょっと普通ではない釣り方をします。“しもり釣り”は“下り釣り”、“しもらせ釣り”とは“下らせ釣り”で、要はオモリ調整で少しずつ仕掛けが沈むようにしながら釣る方法です。これはタイリクバラタナゴのような超小物釣りに於いてはとても有効な釣り方です。ではその方法です。

竿
 タイリクバラタナゴは人懐っこい魚で、っていうか、居る所には沢山いるので逃げてもすぐに戻ってくる魚です。よって長竿の必要はありません。加えてタイリクバラタナゴは取り辛い魚信を出すので長竿だと不利です。ポイントに届く最短の竿が良いと思います。
 魚信が取り辛い釣りなので硬い竿が好まれる傾向にあるようですが、狙うのが2〜3pほどの魚ですから、かえってバラシが多くなります。僕は逆に思いっきり柔らかい竿の方が好みです。しかしながらそんな小さな魚を釣るのですから、どんな物でも問題ないっていうのが正しい意見だと思います。要は竿に慣れて竿が自分の右腕のようになればどんな竿でもそれなりに使えるということです。

道糸
基本的にはしもり釣りですから糸自体の比重が極めて1に近いものが有利です。加えて、できるだけ水の表面張力が作用しない物がいいと思います。道糸の必要強度は相手が小さいので問題になりませんが、時たま外道で鮒や鯉も掛かりますのである程度の強度がないと浮きごと持って行かれてしまいます。ですから、やはりそこそこの強度が要求されます。

親浮き
 後述する糸浮き(“シモリ”とか“シモリ浮き”とも呼ばれる)と区別するために、『浮き』に“親”の前置詞が付きます。要は一般的な浮きです。
 基本的には縦の魚信を取るための道具ですが、糸浮きを立てる役割や仕掛けを下らせる(仕掛けをゆっくり沈める)道具でもあります。

糸浮き
 しもり釣りの場合ハリスのテンションが低い関係上、横の魚信が多くなります。そしてその横の魚信ほどアワセが効きやすいです。この横の魚信を取るのに便利なのがこの糸浮きです。
 見える範囲で最小の物が良いと思います。糸浮き自体も出来るだけ軽いものが良いと思います。発泡スチロールの小玉で作ったこともありますがとても良かったです。ただ、発泡スチロールは強度がないのであまりお勧めはしません。僕は歯医者で使う特殊な樹脂で作っています。強度は充分なのですが、比重が大きいのであまり良くないかもしれません。
 付ける数は正直言えば一個あれば充分なのですが、タナゴ釣りはお洒落でなくてはいけないとのことなので、親浮きとの見た目のバランスを考えながら決めるといいでしょう。僕はそういうことはあまり考えずに機能だけを考えて釣っていますので2〜3個あればいいと思っていますが、他の人が沢山付けているのを見るとやはり2〜3個では恥ずかしいので5個にしています(笑。これ以上付けるとタナを変えるのが面倒くさくなります。よって僕が我慢できる最大限の数が5個なのです。
 ちなみに、過去に1個とか2個とかも試していますが、やはり少ない方が魚信が大きく出るように感じます。

ナマリ
 ナマリにはそれこそ数えられないくらいの種類がありますが、この釣りには調整が楽な板オモリを使います。
 浮力が大きい浮きなら普通に売られている板オモリで充分ですが、浮力が小さな浮きは普通に売られている板オモリでは厚さがあり過ぎて調節に難儀します。厚さのない、つなりは薄い板オモリも売られているようなのでそれを使うことをお勧めします。僕は医療で使われるレントゲンフィルムが感光しないように挟んでいる薄いナマリ板を切って使ったりもします。

自動ハリス止め
 特別なくちゃいけないという物ではありません。が、タナゴ釣りは相手が小さいために鈎も極小の物を使います。とかく小さな鈎は鈎先も鋭利ですし、ことこの釣りにあっては“砥ぎ”(鈎先を小さくして尖らせること)なんてこともします。鈎先は鋭利であればあるほど鈍るのも早いです。よって時々鈎交換を強いられるのですが、ハリスが細くてその場で結ぶとなるとかなり難儀します。そこでほとんどの人がこの自動ハリス止めを使っています。勿論僕も使っています。サイズがいろいろあるので自分が使うハリスに適合したものを選択します。

ハリス
 ハリスに要求される性能は魚を釣り上げる強度を保ちながら鈎先を魚の方に向ける柔らかさと魚に違和感を与えない、こちらもしなやかさと比重です。
 市販されているハリスはナイロンの場合0.3号の事が多いです。0.3号などというと細いように感じられますが、釣れてくるタナゴのサイズを考えると0.3号では極太です。一般的にハリスは狙う魚のサイズに合わせますが、タナゴの場合はあまり頭の良い魚ではないので少々太くても釣れないわけではありません。ただ、もう一歩先のタナゴ釣りをするためにはやはり細い方が有利であることは確かだと思います。気の利いた釣り具屋さんではナイロンの0.175号を付けて売っているお店もあるようですが、僕はそれでもあまりはかばかしい結果が得られなかったので0.08号まで落としてみました。0.08号は現在市販されているナイロン糸ではもっとも細いものです。これにより多少釣果が上がったので、ちょっと欲深してもっと細くてもっとしなやかな糸を使ってみました。以前磯からの大物釣りをやっていたときに使っていた磯ハンター100号(ダイニーマ 比重0.98)を解して、それを手で撚って概ね0.001号ほどのハリスを自作してみました。これは結構大変な作業でした。これは明らかに効果しました。いつも通りに釣っていても倍までは行かないにしてもそれくらい掛かりが良くなりました。が、倍くらい釣れたとしてもこのハリスを作る手間を考えるととてもやる気は起こらず、しかも道具に釣らせてもらっている自分が悲しく思えたので辞めました。で、市販品を調べたら近いものを発見しました。よつあみから販売されている「パワージーニス ウルトラ鮎/ホワイト」です。磯ハンターと同じ素材ですから比重0.98。ということは水より軽いということです。しかもダイニーマは腰がないのでフレキシブルに動いてくれます。ただ、これがまた曲者で、アワセがスムースでないとナマリを中心とした振り子のようになって道糸に絡み付いてしまいます。でもそれも慣れれば気にならなくなります。またそのままでは自動ハリス止めに止まらないので工夫が必要です。


 タナゴの鈎は沢山の種類がありますが、ことタイリクバラタナゴとなるとその中でも極小のものを使います。極小といってもパッケージに極小と表示された物ではなく、鈎のフトコロの深さは小さいときう意味の極小です。仕掛けが馴染んで(この釣りではあまり馴染む事がないのですが)鈎が鈎が立った時、真横から魚が喰い付いてくるとするとフトコロの最深部から鈎先までの距離が大きいと、口が小さいタイリクバラタナゴの口に鈎先が入らないからです。
 現在売られているタイリクバラタナゴ釣りに使える鈎の主な物は

 ・オーナー 一寸タナゴ
       新半月
       極小
       流線
       オカメ
       三腰

 ・ささめ針 新虹鱗タナゴ
       紅虹鱗タナゴ

 ・マルフジ 別誂研ぎたなご 極小鈎スレ Z-036 
               くのいち  Z-043
               極小鈎スレ Z-036

 ・がまかつ 極(キワメ)タナゴ

だと思います。
これをこのまま使ってもいいのですが、より小さなタイリクバラタナゴを釣るのにはそれを砥いで使います。タナゴ釣りの世界で“砥ぐ”というのは、ただ単に鈎先を鋭くするのではなく、鈎先を小さくしてフトコロの最深部から鈎先までの距離を小さくしてより小さなタイリクバラタナゴの口の中に鈎先が入るようにすることを意味します。


タイリクバラタナゴ釣りに最も適した餌はタマムシ(イラガの幼虫)だと言われています。僕は使ったことがありませんが、頭部をハサミで切り落とし、中の内臓を鈎先に絡めて使うのだそうです。内臓の繊維が強いので、一度付ければそれで何匹も釣れるそうです。こんないい餌があったら使うのが当たり前なのですが、タマムシを手に入れるのが大変で、少なくとも売られていることは希で、僕自身も、自分で取りに行くほどこの釣りに真剣になれないのです。よって、餌はもっぱら練り餌を使っています。グルテンが配合されているものが、やはり繊維が鈎先に残るのでお勧めです。僕の場合、指先で丸められないくらいのユルユル練り(概ね体積比で粉末:水=1:2.5くらい)で使います。しかし、これも僕の基本で魚の活性度、タナの浅・深などによって硬くして使うこともあります。マルキューの『グルテン5』や『わたグル』を使っているのをよく見ますが、個人的にはモーリスから発売されている[BASIC]セットグルテンというのが好きです。でもどれでもたいした違いはないと思います。時々黄身練りを使ってみたりもしています。グルテンに比べて黄身練りの方が型が一回り大きくなるような気がしています。シリンジの先に小さく餌付けができるようにしています。


【釣り方】

 タイリクバラタナゴにもいろいろな釣り方があるようですが、ここでは上記しましたように最もポピュラーな浮き釣りについて書きます。基本的にはシモリ(シモラセ)釣りです。

コマセ
 僕はコマセは使用しません。
 グルテン餌がコマセの役もしてくれるので必要がありません。タナゴは集まって来ている時が一番ガッツリ喰ってくれます。集まり過ぎるとつつくような喰い方に変わってしまうので、アワセが難しくなります。集まらなければ釣れないし、集まり過ぎるとまた釣れない・・・適度に寄せて適度に間引く(釣り上げる)のもテクニックの一つだと思います。

投餌
 基本的に投げるのではなくて、竿で仕掛けを吊るして真っ直ぐに落とす感じです。特に僕はユルユルの餌が好きなので、投げたら餌だけすっ飛んでいってしまいます(笑)。投げる必要がある場合もありますが、基本は真っ直ぐ落としです。

魚信
 タイリクバラタナゴの魚信は個性が大きく、思いっきり引っ張る奴もいればほとんど浮きが動かない奴もいます。浮きが微かにでも動いたらアワセちゃいましょう。
 タイリクバラタナゴはその日その日によって魚信の出方が変わります。しかし、その日その日によって魚信の共通点みたいなのがあります。これも餌の硬さやハリスの長さなどによるのですが、もしその共通点みたいなのが判ったら、そのタイミングで魚信があろうと無かろうとアワセてしまうのが数釣りのコツです。
 ちなみに魚信がないのも魚信です。って、これ可笑しいのですが、タイリクバラタナゴはほとんどの場合仕掛けを入れればすぐに魚信が出ます。でも、もし浮きに何の変化もなければそれは仕掛けが沈む前に餌が落ちてしまったか居食い(餌に喰い付いているけど動かない)です。いずれにしても上げなくてはならないので、魚信がなかったら魚信と思ってアワセてみましょう。

アワセ
 アワセというのは鈎を口びるに貫通させる作業のことですが、小さいの鈎は鈎先も鋭利なのでそれほど力を入れることはありません。魚信があったら竿をゆっくり上げるだけで充分です。特によく砥げた砥ぎ鈎を使っているときはアワセはまったく必要なく、上げれば掛かっているくらいです。

取り込み
 特別な取り込み法というのはありませんが、タイリクバラタナゴに使う鈎は極小です。砥ぎ鈎などは尚更フトコロも極小、つまりはフトコロの深さが浅いわけです。これは外れやすいことを意味しますのでその辺の注意が必要です。一定のテンションを掛けていれば外れることはないのですが、単竿の場合はそれがとても困難です。特に僕のように糸やハリスに伸びが少ない素材を使っているとその傾向が顕著に現われます。その分を竿の柔らかさで補い、自分でも竿の操作を研究しなければなりません。

 これがタイリクバラタナゴ釣りの基礎です。


 それではタイリクバラタナゴ釣りについて詳しく述べて行きたいと思います。勿論、僕の主観ですから皆様とは違う部分もあるかもしれません。タイリクバラタナゴ釣りは誰にも教えてもらった事がなく、自分だけでやってきたのがその原因です。教えてもらってそれを伝授する事も大切ですが、先入観を持たない素人があれこれ考えながらやると新たな発見があったりするので、またそちらも貴重だと思います。それでは各論について述べて行きたいと思います。

・鈎の詳細・・・・・・・・・

・竿について・・・・・・・・

・餌について・・・・・・・・

・ハリスについて・・・・・・

・親ウキについて・・・・・・

・糸ウキについて・・・・・・

・道糸について・・・・・・・